同市場2位のリフトは3月29日に米ナスダック証券取引所に上場し評価額は2兆円を上回った。もしウーバーが上場すれば時価総額は1200億ドルとも報じられている。2社合わせると日本円で15兆円を超える。これは米自動車ビッグスリーの現時点の時価総額を足した額よりも大きい。
ちなみに、両社の筆頭株主はウーバーがソフトバンクで、リフトが楽天と、どちらも日本企業だ。
大手ライドシェアは軒並み赤字企業
ところが、これほど株式市場の期待が高いにもかかわらず、ほとんどのライドシェア企業は赤字である。リフトは黒字化したことがない。2018年の売上高は前年比で倍増したが、損失も32%も増え9億ドル(約1000億円)を超えた。
ウーバーは2018年通期決算で売上高113億ドル(約1兆2500億円)になるものの、一時的利益を除いたベースでの事業損益は30億3000万ドル(約3300億円)の赤字となった。過去3年間の損失額は合計100億ドル(1兆円)を超えている。
2016年にウーバーの中国事業を買収し、中国市場で約80%の圧倒的シェアをもつDiDiは、今や世界最大のライドシェア企業でもある。しかし、2018年度上半期決算で約660億円の赤字を公表しており、2012年の会社設立以来利益を出せていない。そのDiDiも株式公開を目指しているが、やはり、上場すれば700億~800億ドル(約7兆7000億~8兆8000億円)の巨大な時価総額が予想されている。
ちなみに、DiDiは中国のテック企業巨人と言われるBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)3社すべてから出資を受けている例外的な存在である。それほど将来性が高いと見込まれているわけだ。
しかし、利益が出ていないライドシェア企業各社に、なぜこれほど巨額の企業価値が期待できるのだろうか?
ウーバーは典型的な「プラットフォーム型のビジネスモデル」
筆者は現在ビジネススクールの教授であり戦略コンサルタントでもある。マーケティングとイノベーションを専門として実務と教室とを行き来している。ここでは、ビジネススクールでも教えているセオリーやコンセプトを使ってウーバーのビジネスモデルを考えてみよう。
ウーバーは、いわゆる「プラットフォーム型のビジネスモデル」である。
プラットフォームとは、生産者と消費者をマッチングする場やエコシステムを提供し、双方に価値を創造するビジネスモデルのことである。たとえば、推定時価総額293億ドル(約3兆円)のアメリカの民泊企業エアービーアンドビーであれば、自宅の部屋を提供する貸主が生産者であり、そこに宿泊するユーザーが消費者である。エアービーアンドビーは、空き部屋を提供する貸主と宿泊希望者のユーザーをマッチングして収益をあげるプラットフォーマーである。
ウーバーに限らず、業界構造を変えるような成長が著しい企業みるとプラットフォームのビジネスモデルが多いことに気づく。事実、2019年3月時点における世界の時価総額上位10社のうち7社(マイクロソフト、アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブック、アリババ、テンセント)が、プラットフォームのビジネスモデルを採用している。
今日デジタルビジネスに関わる経営者ならば、プラットフォームのビジネスモデルを理解しておくことは必須だろう。