ビジネス

2019.04.12 09:00

巨額損失でも「10兆円超え上場」が予想されるウーバーのビジネスモデルとは


モビリティ市場におけるウーバーの可能性

ウーバーが今後のモビリティ市場でどこまで成功を収めるかは分からないが、ドラッカーに習い、「すでに起こった未来」(現実に起きていること)から考えてみよう。

ウーバーの未来は現時点で直面する重要な課題をどう乗り切るかで少なからず変化するだろう。

例えば、自動運転技術である。ウーバーの収益改善のキードライバーの一つが自動運転にあるのは間違いない。しかし、現状のウーバーの自動運転技術はかなり劣勢だ。

実は、米カリフォルニア州が2019年2月に公表した自動運転テスト結果レポートによって自動運転車を開発する各社の技術レベルが明らかになっている。現時点では、グーグルの「ウェイモ」が圧倒的に先を行っている。ところが、ウーバーの自動運転技術の評価は、グーグルはおろか、他社と比べてもかなり低い。公表された「介入レート」(事故の危険があるとして人間が運転に介入する回数)のデータによれば、安全性でトップのグーグルとは430倍もの差がある。単独での巻き返しは難しいと見ているのか、自動運転技術でグーグルと提携を模索中とも報じられている。もしビジネスモデルのコアとなるリソースを他社に依存しなければならないとしたら、コストメリットを含め事業展開上の様々な制約も生じるだろう。

他にも、企業カルチャーの問題がある。2017年に元社員の訴えで火がついた社内セクハラ問題で20人以上が解雇され、創業者で元CEOトラビス・カラニック氏も辞任に追い込まれた。これから本格化するモビリティの巨大市場で覇権を握るほどの卓越したマネジメント力と組織文化が作れるのかは大きな課題だ。

いま世界の自動車メーカーは生き残りをかけてビジネスモデルの転換を模索する最中にある。トヨタはウーバーにも出資し、ライドシェア事業における布石を打っている。自動運転技術で先頭を走るグーグルやEVへの投資を強めるアマゾンの動きも目が離せない。これから本格化するMaaS市場ではたして誰が覇権をにぎるのか。ビジネスモデル競争という観点でも見どころである。

文=河野龍太

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