博物館と見紛う品揃えのこの店は、独創的な一品から洗練された一品、常識をくつがえすような一品から希少品の数々までが備わっている。初めてのウイスキーを発見できる場であると同時に、ウイスキー愛飲家と交流もできる場だ。
新しい試飲スペース「ル・ラボ」
「ラ・メゾン・デュ・ウイスキー」の店内には、50周年を迎えて新たに、初心者から愛好家まで広く集えるスペース、「ル・ラボ」が作られた。そのオープンを記念して開かれたマスタークラスの試飲会に、筆者は参加した。
モダンな内装の部屋でテイスティングしたのは9本。そのうち、印象に残った3本について報告したい。
ちなみに筆者はウイスキーの愛好家としてはアマチュアであり、決して専門家でも玄人はだしなわけでもない。以下はあくまで私の好みで選んだ3本であり、感想も個人的なものであることをお断りしておく。
当日は、ガイド役を務めてくれた人の助言に従い、最初はストレートで、次には数滴の水を加えてと、2段階で味わってみた。
「エドラダワー10年/2008年/アルコール度数57.9度」
独特の個性に驚いた。グラスから立ち上がる香りを鼻腔に感じた時、これは一体どんなウイスキーだろう?と首をひねらざるを得なかった。だがそのいぶかしみは、口内に含んだ瞬間、「驚き」にすり替わった。味わいは、まるで古いポルト酒のよう。
その驚きも、続いて押し寄せる別の風味に再びすぐ取って代わられる。田舎にいるような香り、森の中とか地面を掘り起こした時のような香りが広がったのだ。余韻が長く、最初の印象をずっと感じられることもとりわけ心地よい。
食後の消化を助ける極上の1杯として、またはデザート酒として楽しむのもいいだろう。葉巻が好きな人にもよく好まれていると聞いた。スコットランドでもっとも小規模な蒸溜所の製品だという点も印象的に残る。
「駒ヶ岳マルス/2015年/アルコール度数61.2度」
ウイスキー愛好家は、ピート香を好む人と、まったく好まない人に分かれる。私自身はスコットランドを巡っている間にようやく、少しずつ、ピート香が好きになった向きだ。
「駒ヶ岳マルス」を印象に残った1本に選んだのも、その影響があると思う。日本の信州マルス蒸溜所で作られるこのウイスキーには、ピートがはっきりと感じ取れるからだ。鼻腔と口内を直撃する香りは、非常に際立っていた。だがこの香りが逆に、口内を爽やかにしてくれるのだ。
余韻にはミネラル分の印象も残った。その香りと味わいに心の奥まで陶酔させられ、遠い記憶を思い起こさせられた。実に楽しいウイスキーだった。