小学校も高学年になってくると、もっと高度な問題解決を考えだす子もいます。すなわち、『お互い、何を好きかを言わないで、まずじゃんけんをする。勝った方が、先に好きなものを1個取るか、後に、残った2個を取るかを選べることにする』
つまり、勝って『先に取る』を選んだ子は1個しかもらえないが、『好きなもの』を取れることは保証されている。かたや、勝って『後から取る』を選べば、倍の2個の『個数』が保証される。しかし、相手の好きなものがもし自分と違えば、好きなものも取れるし個数も倍になる。賭けですよね。
『3割る2は割り切れない』ではなく、こうして状況に応じて筋道立てて考えていく体験がこの『アメ玉』問題のようなもので体験出来たら、ある意味それこそが生活に役立つ問題解決能力につながると言っていいでしょう。
「ドキドキするアメ玉の分け方」を親子で考える
家庭学習では、こういう「ドキドキするアメ玉の分け方」を親子で考えるとよい、という。
「物事の考え方を、これくらい遊んで考えられたら抜群です。子どもとのこのやりとりの楽しささえ覚えれば、『なんでできないの?』『なんでわからなかったの?』なんて、2度と言わなくてすむようになりますよ。
親は、どうしてもすぐに結論を出させたがる。答えを出せるのが一番、と思いがちですが、それを繰り返すと子どもに、『間違えること=悪いこと』の直結思考を植えつけてしまいます。そうすると、子どもはビクビクして萎縮する。
私は、初めての単元などで間違えるのはあたり前、とつねづね言っています。間違える回数が多い人の方が、幅が広がる。経験が増える。次のチャンスで、失敗を思い出して、『あれをやって失敗したことがある、今回は避けよう』と応用がきく。いつも一発正解だと、限られた経験しかできないから、何をやったら失敗するかを学べないと思います。
まちがいのままに進めてみる。「なぜ、30分は0.3時間じゃないの?」の子はこう教える
「まちがいの経験」が重要なことはわかった。ではここでたとえば、「なぜ、30分は0.3時間じゃないの?」というまちがいにはどう対応したらよいか、を考えてみよう。
田中氏の最新の著書『子どもに教えるときにほんとうに大切なこと』から以下、引用してみる。
「『なぜ、30分は0.3時間じゃないの?』という子どもの声に答える時に大切にしたいのは、まずは子どものまちがいの道筋を一緒にたどってみるということ。
今回の場合で言えば、『0.3時間と答えた子どものまちがいのままに、いったん先を進めてみる』ということです。
私は、子どもが持っていたテスト用紙をいったん脇によけました。
そして、手近にあった白紙の用紙を机にひろげ、『なるほど。30分は0.3時間なんだよね』と子どもにたしかめてから、その紙に30分=0.3時間と書きました。
そうしておいて、子どもに『じゃあ、40分は?』とたずねると、子どもはすぐに『0.4時間』と答えました。私は先ほどの式に続けて40分=0.4時間と書きました。
つづけて『なるほど。じゃあ50分は?』と聞くと、『0.5時間』。
『60分は?』『0.6時間』。
その子どもの言葉をひろって、私が『60分=0.6時間』と紙に書いたと同時に、その子どもは『あれ?』と声をあげました」
そして、この後この子どもは、「60分は1時間なのに、0.6時間じゃたりない!」と自分で気づくのである。