名門国立小のカリスマ先生に聞く。「なんでこれがわからないの?」でイラっときた時の教え方

筑波大学付属小学校副校長の田中博史氏


家庭での指導も、ボケとツッコミ! 台本なしの「アドリブ」が大事

田中氏は、「先生のための夏休み充電スペシャル」と題し、お笑い芸人とのトークイベントを毎年開催している。その目的は何か。

「これは、お笑い芸人が、ライブで観客の心をつかむためにしている工夫や技術を授業の中で応用してもらうために始めたことです。山口智充さん、中川家の礼二さん、友近さんたちとやっています。今年はブラマヨの小杉さんとやる予定です。

実は家庭で子どもに教える時も、お笑いの人たちの技術は、使えるんですよ。

彼らは、観客の反応を見ながら、今日の客はこの話だとノリがよくないな、と思うとネタを変えている。学校の先生、そして家庭学習でのご両親は、その工夫をしないことが多い。

本来は、この子供は、今自分が説明しているここでつまづいているなと思ったら、そこで立ち止まって軌道修正をしなければならないんですが、多くの先生、そして保護者は、とにかく『ここまでやらせなければ・わからせなければ』で突き進んでしまう。せっかく生徒の顔が見られるのに、もったいない。台本通りやるのはつまらないです。

とくに中川家の礼二さんとはリズムが合います。彼は、相方が兄弟ということもあって、台本をまったく書かず、その場の雰囲気でシナリオを決めることが多いのだそうです。

礼二さんは、学校の先生も、目の前の子供が眠そうにしていたら、これじゃ面白くない? 問題変えようか? と動きながら授業をしたらいいのにな、と言っていました。

山口智充さんや友近さんたちも、そういう調整、というか即興がうまい、根っからのアドリブ派ですね。もっともこれくらいのレベルの芸人さんになると、みんなアドリブの達人でしょうけれど。

子どもがボケてたらツッこむ。そんなお笑い芸人的な技術が備わったら、先生の授業力も一ランクあがったと言えるのではないでしょうか。



家庭でもどうか、子どもの顔をよく見てツッコミを入れてください。ぜひとも『個別指導』の強みを活かしましょう。予定通り行かなくて上等、脱線してもいいじゃないですか。子どもをいじる、時には親が間違えることで、子どもの注意を惹きつける。

こんな親子の勉強のひとときは子どもにとって楽しい時間になりますし、説明役をたくさん引き受けた子どもの学びは、実のあるものになります」

ちなみに、去年の夏、東京ビッグタウンで開催された「日本数学教育学会第100回セレモニー』の際、ココリコの田中直樹氏、山口智充氏とのトークショーを企画し、会場を満杯にしたという。

「この時、小学生の頃の算数のイメージが、『できるやつはスター。できない僕たちは、授業中、質問もできなかった』という彼らに『算数ができない子』たちの代表になってもらいました。『本当はどんな質問がしたかったの?』と聞いて、模擬授業に参加してもらったんですよ。大好評でした」
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