チーム“Nextdoor”(Courtesy Nextdoor)
━━なぜNextdoorに軸足を置くことにしたのですか。
若いころからつねに自分のアイデア実現のために奮闘し、自由でいること、仕事と情熱を両立することに力を注いできました。17歳のとき、ほぼ遊びのつもりで親友たちといっしょにイベントを企画し始めたんですが、それが結局仕事につながったんです。
大学を卒業して、イベントの企画の仕事を続けるかやめるか決断しなければならなくて。
結局はその時やっていたプロジェクトを続ける選択はせず、コペンハーゲンに引っ越したんです。そこでは、データとAIを扱うスタートアップ企業「Digiseg」で、イタリア担当マネージャーとして2年間働きました。この企業では、学生時代のイベント企画で感じた活気と同じようなものを感じました。CEO、COOとぼくの3人で始めて、1年半で13人になりました。
2年後、働きながらコペンハーゲン・ビジネス・スクールで経済とビジネス・アドミニストレーションの修士を取りました。専門はブランディングとマーケティングでした。修士を取った数カ月後、コペンハーゲンに別れを告げ、Nextdoorイタリア支部のトップとしてのキャリアを開始しました。
━━Nextdoorをイタリアにどう根付かせようと考えていますか。
Nextdoorには目的があります。それは、近所に住む人たちとつながり、自分の住んでいるところをもっと住みやすくする、というものです。ですが、イタリアでNextdoorを広めるにあたって、ぼく自身にはもっと大きな目標があります。
Nextdoorは、個々の地域で集めた意見を、よその地域と共有、応用することも可能なネットワークです。たとえば、公共事業。ミラノの特定8地域で行う公共事業について、それぞれの地域住民の意見をSNSを利用して吸い上げたい、というような場面でもNextdoorを利用してもらいたい。そうすれば、自分の住む界隈だけでなく、もっと広範囲、つまり国全体の環境をもっとよくすることに、一役買えると思っているんです。
━━Nextdoorの利用例で、何かエピソードはありますか。
アメリカのNextdoorでは、たとえば女優のジュリア・ロバーツが、自分の住む地域を登録して、いなくなった飼い犬を見つけたことがあります。
イタリアでとても印象的だったのは、元サッカー選手でイタリア代表のヴィンチェンツォ・イアクインタの例です。彼はある病気の少女のためにチャリティーコンサートを企画して、情報拡散にNextdoorを利用してくれました。また、ブラジル出身の女性歌手のシモーネがいくつかの地域にまたがるビーチバレーのトーナメントを企画した時、Nextdoorで情報拡散して、成功させていました。
━━イタリアの全領域に拡大するにあたって問題は感じますか。イタリアは、アメリカと比較すると、テクノロジーの点でどうしても遅れを取っていると思いますが。
とくに問題は感じていません。Nextdoorは、大都市でも小さな地方の町でも機能します。アプリ内に現れる自分の居住地域では、住人の人数がほぼ実際と同数です。どこの住人であろうと、地域のコミュニティに「属している」という感覚を、ヴァーチャルであれ実感できるようになっています。Nextdoorで作る地域ネットワークは独立していて、「管理者」を通してユーザー自身が自主的に管理する仕組みなんです。
━━このプロジェクトを広めることにおいて、難しい点はどんなことですか。
野心的なプロジェクトを立ち上げる時、課題が山積みなのは当然ですよね。今回はまずもちろん、まずユーザーにNextdoorの価値を理解してもらうこと。それがなかなか難しい点です。それを実現するために、ユーザーの要望を注意深く聞くことをプロジェクトの最重要案件にしています。そういう要望をすくい上げて、Nextdoorでしか味わえない、快適な体験に変えていこうと思います。
━━イタリアの未来について、どう思いますか。
難しい質問ですね。私たちは一般的な価値の低下、文化の貧困化によって厳しい時代を生きていますが、同時にぼくも含めた新しい世代での変化も見られます。ぼくたちミレニアル世代は、あふれる情報にアクセスすることができるし、自由があり、多くのチャンスに恵まれています。そうした若者たちが、政治に新しい風を通して、この国に正しい決断をもたらしてくれることを願います。
━━ほかに構想中のプロジェクトはありますか。
頭の中にはつねにアイデアがいっぱいで、友人や同僚と話すことでアイデアを形にする努力をしています。でも今は、Nextdoorプロジェクトを成功させることに完全に集中しています。道半ばで投げ出して、自分自身を失望させたくないんです。