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2019.02.13 07:30

タイの「辺境」リゾート地に人々が集まる その代償は開発合戦だった

リペ島の至る場所で観光用のカラフルなボートを目にする

リペ島の至る場所で観光用のカラフルなボートを目にする

東南アジア・タイは世界有数の「リゾート天国」だ。プーケット、パタヤ、サムイ、サメット、ホアヒン。数えだしたらきりがない。

しかし近年、移動コストの低下を背景に、こうした知名度の高いリゾート地は、欧米やロシア、中国などからの観光客でごった返すようになった。静けさを求めるツーリストは、以前の姿を懐かしみつつ喧騒の中で過ごすか、より遠方のリゾート地を目指す。

観光客の増加が奪ったのは「静けさ」だけではない。レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ザ・ビーチ』の舞台となったピピ島は、観光客が殺到した結果、スピードボートによるサンゴ礁の損傷が深刻化。その結果、タイ政府などが観光客の立ち入りを禁じる事態に発展した。

サンゴ礁の損傷以外にも、ホテルや飲食店の排水による水質汚染、ゴミの増加など、観光客の増加に対処しきれていないリゾート地は多い。そして、需要と供給の一致から、より「辺境」の地でリゾート開発が進んでいく。

このサイクルは、永遠に続くわけではない。なぜなら、リゾート地には条件があるからだ。白い砂浜と青い海は最低限必要だし、最寄りの空港から数時間以内でアクセスできなければ、客のボリュームが足りず投資額を回収することができない。食料や物資を定期的に運ぶための物流網も、ある程度は必要であろう。こうした条件を考慮すると、タイにおけるリゾート開発の余地は、もう残り少ない。

「タイ最後の楽園」とは

そんな中、最近注目を集めるリゾート地がある。アンダマン海に浮かび、タイで最も南のエリアに位置する小島、リペ島だ。美しいサンゴとビーチが残る貴重なこの島は、「タイ最後の楽園」とも称される。

筆者は2017年7月に訪問する機会に恵まれた。バンコクからの場合、LCCでドンムアン空港からハチャイ空港へ飛び、ワゴン車、スピードボートを乗り継いで行く。今回、スムーズに移動することができたが、それでもバンコクから計6時間。しかも、海は大荒れだった。


オフシーズンのアンダマン海は荒れる。戻しそうになるのを必死で耐える乗客の姿が目立った

今回のように、 オフシーズンのアンダマン海は荒れることが多く、酔い止めは必須だ。普段、船酔いしない筆者だが、行きのボートでは何度も戻しそうになった。

11月ごろから5月ごろまでのオンシーズンは、マレーシアのランカウイ島まで飛行機を使い、そこからフェリーでアクセスできるようだ。フェリーの乗船時間は60〜90分程度。小さな子供連れでも問題ないだろう。


海沿いには映画に登場しそうな景観が続く

筆者が苦労してたどり着いたリペ島のビーチは、オフシーズンでも十分に美しかった。純白のドレスのように白い砂浜に、透き通った青い海。空も抜けるように青い。サンゴのある場所は青が濃くなっており、ほかの青とのコントラストは絵のようだ。初めてその光景を見た時、筆者はあまりの美しさに、しばらくその場から動けなかった。

それでも地元住民によると「オンシーズンの海はもっと美しい」というから驚きだ。ただ、観光客が少ない分、筆者はオフシーズンの方が居心地がよいようにも感じた。


オフシーズンのリペ島は比較的静か。落ち着いた雰囲気の中、余暇を楽しむことができる

リペ島まで足を運んだら参加すべきなのが、シュノーケリングツアーだ(550バーツ程度、1月21日時点で1バーツ=約3.45円)。毎日開催されており、島内のツアー会社ですぐに申し込むことができる。色とりどりのサンゴの森を、原色に近い魚たちが優雅に泳ぐ様は、まさに映画『ファインディング・ニモ』の世界であった。


今回筆者は、1泊あたり500バーツのバンガロー、1600バーツのホテル、2650バーツのリゾートホテルに、1泊ずつ宿泊した。島のサービスレベルを知りたかったからだ。
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文=田中森士

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