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I write about economic and social trends in China. @johannylander

rawf8 / shutterstock

米国と中国の貿易戦争で、負けることになるのは中国だろう。だが、それは中国の国民に利益をもたらすことになると考えられる。

中国には、米国と貿易戦争をするだけの十分な準備が整っていない。その理由として挙げられるのは、「中所得国のわな」と「ルイスのターニング・ポイント」に直面するなかで、中国経済が減速していることだ。

「中所得国のわな」は、経済成長が中所得国のレベルにまで達した後、停滞した状態に陥ることだ。また、「ルイスのターニング・ポイント」は、余剰労働力が減少して賃金が上昇、労働集約型産業においてその国が持つ競争上の優位性が失われ始める転換点を指す。中国の労働力はすでにインドやベトナム、インドネシアに比べて“安価”ではなくなっており、経済成長を妨げる圧力の一つとなっている。

一方、中国には生産能力の増強と内需拡大のペースが一致していないという問題もある。そして、これこそが中国にとって、米国の需要が不可欠な理由だ。米ファースト・フランクリン・フィナンシャル・サービスのチーフ・マーケット・ストラテジスト、ブレット・ユーイングも、この見方に同意している。

ただ、ユーイングは同時に、米国が中国との貿易戦争に勝利することは「実質的な勝ちというよりも、政府の広報活動の問題だ」と指摘する。「勝者を決定する際に重要なのは、何を勝利とするかだ」という。

「中国に関税の引き下げを実行させることは、米政府にとっては完全なPR戦略だ。そして、中国の国有企業とそこから利益を得ている同国の政治家たちにとっては勝利と言えるだろう」

「米国にとっての本当の勝利は、中国企業との合弁に限定されずに同国市場に進出できる状況に向けての意義ある改革を実現すること、知的財産権を保護すること、世界貿易機関(WTO)の執行力を強化することだと考えられる」

貿易戦争での敗北は、中国政府にとってはよくないことだろう。だが、国民にとっては利益となり得る。(中国が負けて米国からの輸入品にかけていた関税を引き下げれば)中国の消費者にとっては商品の選択肢が増え、より安値で購入できることになる。

ユーイングはさらに、次のように述べている。

「興味深いことに、中国はこの問題に現実的に、そして慎重に対応することに合意している。これは、中国の消費者にとっての勝利と考えられる。中国が国際社会において真の競争力を持ち、開かれた経済を実現することにつながると考えられるからだ」

「貿易障壁が削減され、政府の規制を受ける部分が減ることは、どの国の消費者にとってもよいことだ。それは、中国にとっても同じことだろう」

また、貿易戦争での敗北が中国にとってよいことであるもう一つの理由は、不動産バブルの崩壊と住宅価格の下落の可能性が高まることだ。若い世代が手ごろな価格で住宅を購入できるようになることは、家族の形成と個人消費の増加にとって重要な要素だ。これらは、中国経済の輸出型主導型から内需主導型への移行を助けることになる。

編集=木内涼子

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