さらに種明かしをすると、日本の4%を占めるケミカルリサイクルも、実際には「廃プラスチックを分子に分解してからプラスチック素材に変える」ということはしていない。廃プラを製鉄所に持っていって鉄鉱石と石炭と一緒に燃やしている。
少し専門的になってしまうが、その理由は、科学者曰く、「製鉄所で用いる石炭は、エネルギー源ではなく、酸化鉄を鉄に還元する役割を果たしている。廃プラを混ぜると、消費する石炭の量が減る。つまり廃プラも還元剤として用いているから、サーマルリサイクルではなく、ケミカルリサイクル」となるらしい。
なんだか狐につままれたような気持ちになる。合計して60%。84%のうちの60%だから、日本でリサイクルされているとされるプラスチックの7割強が、じつは炉で燃やされているのだ。
世界はリサイクルからリデュースへ
今年に入り、スターバックスやマクドナルドが、プラスチック製ストローやマドラーを廃止するという発表をして話題になった。背景には、すでに3年ほど前から検討していた紙製ストローが、品質的にも価格的にも実用的になってきたからだ。
これは3RのReduceに相当する。これに対し「ストローやマドラーだけでは不十分だ」と主張した人もいるが、当然これらの企業は他にも動き出している。紙で代替することが難しいコールドドリンク用のカップについても、生分解性プラスチックに置き換える検討をしていることをすでに告知している。
ペットボトルを大量消費しているコカ・コーラやペプシコも、廃プラをリサイクルした再生ペットボトルを徐々に切り替えていくと発表している。すでに安価なケミカルリサイクル技術を開発した欧米の企業とペットボトルの調達契約も締結済だ。そのためにも廃プラを集めに行く。
一方、日本でも、海洋プラスチック対策の推進のため、2018年、化学業界5団体が「海洋プラスチック問題対応協議会」を設置した。ところがこの協議会の会長は、昨年10月、「日本ではサーマルリサイクルが進んでいて各国の参考モデルになる」と発言した。これには正直驚いた。
化学業界のトップがこのような姿勢だから、日本ではマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの技術が発達してきていないのだ。日本の飲料メーカーが再生ペットボトル(通称rPET)に切り替えようとしても、国内に供給できる企業がない。その間にも、グローバル企業は、欧米のベンチャーと提携し、どんどんrPETに切り替えていってしまう。
この状態で、海洋プラスチック問題への対策として、各国がプラスチック規制を強化していったとき、勝つのはグローバル企業か日本企業か。答えは自明だろう。海洋プラスチック問題は、環境や倫理の問題だけではなく、企業にとっては生き残りのための経営戦略、つまりサステナビリティの話でもあるのだ。
連載:21世紀サステナビリティ経営の極意
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