止まらない気候変動 米国はいつ事実を受け入れるのか?

2017年8月、テキサス州を襲ったハリケーン・ハービーの影響で洪水する川(Trong Nguyen / Shutterstock.com)

米政府は先日、気候変動の影響やリスク、そして米国の対策をまとめた全米気候評価(NCA)報告書を発表した。その結論は無責任なドナルド・トランプ大統領の見解とは全く異なるもので、既に生じ始めている気候変動の影響が近い将来壊滅的な規模になり、数万人の犠牲者と数千億ドル(数十兆円)の被害につながるとされる。

一方、同報告書に対するトランプ政権の反応はというと、報告書に注目が集まらないよう、年間を通じて最大の商戦期である「ブラックフライデー」当日に同報告書を発表。報告書では、何も対策を取らないことによる犠牲の増大が強調されているが、トランプはまさに、何もしないことを主張している。

世界各地で起きている現象の点と点を科学者がつなげていくにつれ、こうした報告書の発表は増えると予想される。強さを増すハリケーンや猛暑、森林火災、洪水などは、偶然でも悪運でもなく、大規模な気候変動の結果だ。米国西部に広がる山々では積雪量が減っており、河川の水の供給量が脅かされているし、カリブ海やハワイ、フロリダ、太平洋地域ではサンゴ礁の白化により生態系が深刻に脅かされている。

森林火災の延焼範囲は拡大し、期間も長期化している。米国で唯一北極圏にあるアラスカ州では急速に温暖化が進み、生態系が劇的に変化して沿岸やツンドラの永久凍土が解け始めている。ノースカロライナ州とサウスカロライナ州では、ハリケーン「フローレンス」による洪水被害が数週間にわたり続いた。

1600ページにわたる同報告書は、13の米連邦政府機関が共同でまとめたもので、この分野の最前線に立つ科学者約300人を含めた1000人以上が関わった。その内容を軽視したり、大げさだと一蹴したりする者は、無責任か低能、あるいはその両方だと言える。

この深刻な問題を解決するためには、即時行動への同意を各方面から集めることが必要だ。即時とは今のことで、2040年ではない。適切な対策を取れば、現状改善につながる実質的な効果を生むことができるはずだ。時間が過ぎれば状況改善はほぼ不可能となり、コストは膨れ上がるだろう。即時行動を怠れば、その影響は甚大となり、対応は困難を極める。

私たちはこれをしっかりと理解し、言い訳をやめなければならない。これはもはや孫の世代の問題ではない。私たちの誰もが、生きている間に気候変動の影響を目撃することになる。一方で、無責任な人たちはそっぽを向いたり、専門家の見解を否定したり、その足を引っ張ったり、持続不可能な主張を持ち出したり、ただ真っ赤なうそをついたりする。しかし、私たちの周囲で大変動が既に起きているのは紛れもない事実だ。

編集=遠藤宗生

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