施井:僕らはブロックチェーン・プロジェクトを通じて、アーティストや作家の価値向上だけでなく、コレクターの評価にも繋げたいと思っています。ミケランジェロを最初に認めて作品を買った人の名前ってわからないじゃないですか?でも、最初に彼の作品を購入した人物こそ、本当の偉人だと僕は思います。
石上:本当にそうですね。本阿弥光悦(ほんあみこうえつ) という江戸初期の芸術家がいるのですが、彼の陶芸作品において「これは本当に彼の作品か否か」という議論が繰り返され続けています。もしその時代からブロックチェーンがあれば、そういう論争すら生まれない。アートこそ、作品こそ来歴情報によって価値を見える化すべきなのです。
起業家とアーティストは似ている。たった一人で、世界の常識を変えられる
リリース記事を通した出会いから約4カ月、3人の念願だったプラットフォーム、「B-OWND(ビーオウンド)」のウェブサイトが公開された。⽇本のアート・⼯芸作品を世界に向けて販売・ 流通が可能な新たなプラットフォームのローンチは2019年春の予定だ。⽇本のアーティスト・⼯芸家と世界中のコレクター(購⼊者)、キュレーター・美術評論家を直接つなぎ、三者の相互評価を公開し、アート関係者および⼀般ユーザーが第三者評価を可視化できるというもの。
また、ブロックチェーンの導⼊により、過去の所有者経緯が重要となるアート(美術品)市場において、作品の付加価値と真贋を担保した上 で、Eコマースを通じた作品の売買を可能になる。
吉田:今回、一緒に世界中の⼈々と⽇本のアーティストをつなぐプラットフォームの整備に取り組むことで、 ⽇本のアート市場を拡⼤し、アーティスト・⼯芸家の活動の幅を広げ、⽇本の⽂化芸術の振興に貢献できると思っています。名誉はもちろん大切ですが、名誉だけでは作品をつくり続けることも、後継者を育てることも難しい。工芸、そしてアートをしっかりと事業化することが我々の使命かもしれません。
施井:ブロックチェーンにより、作品の取引履歴が追いかけられる。つまりは、どのように価値が変遷していったか、何をきっかけに作品価値が向上していったかも可視化することができます。取引金額の一部を作家に還元するような仕組みが可能になるというのは実はほんの一例で、他にも、著作権や販売リージョンの管理など二次流通における作品のマネージメントがしやすくなります。
アメリカのプログラマであり、投資家であるポール・グレアムも著書「ハッカーと画家」の中で、「創造性を追求する点でハッカーと画家は近しい」と言っていますが、同じ理由で一人の想いで世界を変えられるという点で、起業家とアーティストは近しいと感じます。
偉大なアーティストの登場で世界は劇的にとは言わなくとも、少しずつ変えることが出来ます。起業家も同じです。アーティストを守ると言ってはおこがましいですが、閉鎖的でブラックボックスと言われているこの産業に光を当てることは、業界の未来はもちろん、世界の変化の一因ともなれることなのではないかと、僕たちは信じて、この事業を推進していくつもりですね。