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BASE 鶴岡裕太

ランチは街の定食屋、飲みに行くのは大衆居酒屋…。愛されキャラの若き起業家が遂げた急成長の軌跡とは。


平日の昼下がり、若者でにぎわう渋谷のダイナー風カフェに、男性が二人、向かい合って座っている。テーブルにはハイボールとコーラ。二人は談笑したかと思うと、それぞれにスマホをいじったり、ボーッと物思いにふけったり。お互いに気を遣わないでいられる関係であることが、二人のリラックスした表情からよくわかる。

男性の一人は、クラウドファンディング企業・CAMPFIRE創業者の家入一真(39)だ。29歳のとき当時史上最年少でpaperboy&co. (現GMOペパボ)をジャスダックに上場。その後はCAMPFIREを立ち上げたり、東京都知事選に立候補するなど、話題に事欠かない異端児だ。

家入は後進の育成にも熱心で、彼から物心両面の支援を得て羽ばたいた起業家は多い。カフェで家入の話に相槌を打っているのも、その一人。BASEの鶴岡裕太CEO(28)だ。

じつは二人は先週も午後3時から夜の11時まで、家から5分のカフェで過ごしたばかり。用事はなかったが、「おなかが空いた。ごはん食べたい」と家入から誘った。8時間二人で座っていたが、話をしたのは3時間。その他は何をするのでもなく、思い思いのことをやっていた。



「普段はアポが詰まっていて、話す内容も決まっている。一人でいると、ネットフリックスを見たり本を読んでしまう。起業家にとって、何もしない時間、話さない時間は貴重。鶴ちゃんは、ときおり話をする距離感で接してくれるから助かる」(家入)

家入と鶴岡は、いわば師匠と弟子の関係。しかし、家入の鶴岡評を聞くと、仲の良い友達といった方が実態に近い。二人の出会いは、2011年にさかのぼる。

当時大学3年生だった鶴岡は、エンジニアを募集するCAMPFIREのツイートを見て、「エンジニアです」と嘘をついて応募する。

「家入さんはネット上で見る憧れの人。それなのにすごくフレンドリーで、若者にもちゃんと話してくれた」(鶴岡)

鶴岡はCAMPFIREでインターンをしながらプログラミングを学んだものの、入社はできなかった。ただ、このときの縁で家入が運営するシェアオフィスに出入りし始め、一緒に複数のサービスをつくった。その延長上でリリースしたのが、ECサイト構築支援サービスの「BASE」だった。

「もともとは、大分で小売店を営む母のようにインターネットをよく知らない年配の女性が、気軽にネットショップを開けるようにつくったサービスです。家入さんはアイデアを否定するのではなく、『いいね』といってくれる人。ダメだったらやめればいいというつもりで12年11月にリリースしたら、ユーザーが一気に増え、翌月には起業することになりました」

BASEは初期費用・月額費用ゼロで簡単にネットショップを開設できる。その手軽さが受けて、起業後も順調にショップ開設数は伸び、18年9月には60万店舗を超えた。こうして“家入一門”の成長株となった鶴岡だが、世間からそう見られていることを肯定的に捉えている。

「僕がおかしなことをすると家入さんの名前まで傷つけてしまう。自分一人なら堕落してしまうタイプなので、ちょうどいいプレッシャーになっています」

文=村上 敬 写真=アーウィン・ウォン

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