インド洋の島国モルディブは、スリランカとパキスタンに続いて中国の「債務のわな」に陥った。モルディブが中国に対して負う負債は、ロイター通信などによれば約32億ドル(約3630億円)に上る。国民1人当たり、8000ドルずつの借金を負っていることになる。
モルディブは中国の建設会社に発注した「中国モルディブ友好大橋」などの建設のために、中国政府から多額の融資を受けた。2015年に始動したこの建設プロジェクトは、中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」の一端を成すもの。すでに完了しており、橋は今年8月に開通した。
中国政府は同様の形で、パキスタンとスリランカでも自国の西部と中東、アフリカを結ぶインフラ建設事業を行っている。米ワシントンを拠点とするグローバルストラテジストの一人は、これらの事業に対する中国の投資について、「略奪的な拡張政策に基づく戦略」に従ったものであるとの見方を示す。
中国は、「政府に取引の透明性を求め、腐敗に責任を負うことを求める制度が確立していない国を食いものにしている」という。
また、仏グルノーブル経営学院の副学長は、中国はモルディブに返済能力がないことを知りながら、膨大な額の融資を行っていると指摘。次のように述べている。
「中国が2012年にモルディブに約4億ドルを融資したことも忘れてはならない。これは、モルディブの国民総生産(GNP)の25%に相当する金額だ」
モルディブが最終的に自国の主要な資産を中国に引き渡してしまうことになるのか、国際通貨基金(IMF)に支援を求めることになるかどうかはまだ分からない。だが、明らかなことが一つある。
モルディブ経済は、それほどの規模の負債を抱えるには「小さすぎ、弱すぎる」ということだ。同国の経済規模はスリランカのおよそ5%、パキスタンの約1.5%だ。