デジタル全盛時代でもモレスキンが愛される理由

ロベルト・ロボッティ・ボドニ|モレスキンCMO


ファンを驚かせたデジタルデバイス


モレスキンは、これまでにないプロダクトを世に放った。「スマートライティングセット」だ。スマートペン(ペン+という)で専用のペーパータブレットノートに文字などを書くと、あらかじめアプリをダウンロードしておいたスマートフォンやタブレットに、書いた内容がそのまま転送されるというものだ。ペン先に赤外線カメラが搭載されており、ペンの動きが記録され、デジタル化される仕組みだ。

ロベルトは、このペン+を取り出すと、ペーパータブレットにさらさらと文字を書いて見せた。すると、彼が書いた文字が、間髪入れずに傍のスマートフォンに浮かび上がった。タイムラグはほとんど感じられない。



ロベルトの文字は紙の手帳から瞬時にデバイスへ送られた。モレスキンにしかない刺激を与えてくれるノートである。

ペン+で書いて転送したメモの内容はテキスト変換もでき、ペーパータブレットの右上のメールマークをタップすると、そのページを誰かにメールで送信することも可能だ。デバイスに転送した内容は、ページ数で検索することもできる。

驚くべきは、ペン+が記憶できる容量は、なんと10時間分にも及ぶ。その都度送信してもいいが、1日の終わりにまとめて送信することもできるのだ。

この製品のターゲットは主に2タイプの人々だという。一つはメモした情報を誰かと瞬時に共有したいと願う、生産性を求める人々。もう一つは、デザイナーなどクリエイティビティを求める人々だ。

「発売から数ヶ月経っていますが、消費者からの反応は非常にいいですね。紙との連動という点が非常に評価されており、現在は家電を扱う店舗でも販売しています。ただ、消費者からは『ペンの充電をリマインドしてくれる機能が欲しい!』という声がしばしば聞かれます。私たちはこれまでずっとペンを使ってきましたが、ペンを充電するという習慣はありませんでしたから」

私たちはこれからも紙に書き続けるでしょう

世界中の人々がデジタルデバイスに囲まれている今、モレスキンの製品を通して、人々が手書きの魅力に再び気づく。そのことこそが、ブランドが世界中にもたらす価値であるとロベルトは話す。

「モレスキンの使命は、人々の自己表現を助けることに加え、人々が知識を得ること、文化をシェアすることです。時代は変化していますが、実は紙のマーケットは伸びています。人々は引き続き紙を持ち続け、紙に書き続けることでしょう。今後、既存のノートではより多くのサイズやカラーを提供していきます。そして、より多くの方々に私たちの商品を身近に感じていただけるよう、限定商品で共感を呼ぶストーリー作りを行っていく予定です。また、バッグでは若い世代をターゲットに、さまざまなファブリックやカラーを展開していきたいですね」

日本市場への期待も大きく、昨年は日本のデザイナーと一緒に六本木のアートナイトに参加するなど、イベントなども積極的に行っている。また、既存製品を企業ノベルティとして使えるようにカスタマイズするBtoBサービスも行っている。

「日本は、紙に対して文化的に非常に期待値が高いマーケットだと認識しています。紙とデジタルを繋ぐスマートライティングセットを始め、紙に書くことでひらめきや刺激が生まれるようなプロダクトやプラットフォームを提供していきます。インスピレーションを与える製品を通じて日本のみなさんと繋がることができるのを、楽しみにしています」

20世紀から21世紀へと時代が移り、人々はデジタルデバイスを手に入れた。それでもなお、イタリアで、世界で、そして日本で愛されるモレスキン。そのノートはこれからも人々のひらめきとクリエイティビティを刺激してくれることだろう。

文=吉田 渓 写真=西川節子

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