「ヨーロッパにおける社員の持ち株への規制の在り方は多くの国で時代と合致していない。非効率極まりない状況だ」と、彼らは欧州の議員らに宛てた合同書簡で述べた。
スタートアップ企業では社員へのストックオプションの付与が通例となっており、一般的にはストックオプションへの課税は、社員がその権利を行使した場合になされている。しかし、ベルギーではストックオプションを得た社員らは、ただちに納税を行う義務がある。
大半のスタートアップが失敗に終わるなかで、何の見返りも得られずに税金だけを支払わされる社員たちがいるのだ。この制度の存在により、ベルギーではストックオプションの付与が困難になっている。
今回の書簡はベルギーなどの諸国に、この制度の改善を行うよう呼びかけた。ストックオプションが無税で付与される英国やエストニア、フランスと同じ制度をとるよう求めている。
この動きには30名のCEOが賛同し、欧州のウーバーと呼ばれる「Taxify」創業者のMarkus Villigや、ペイパルに22億ドルで買収されることが決まった「iZettle」創業者のJacob de Geer、先日ロンドン市場でIPOを果たした「Funding Circle」共同創業者のSamir Desaiらもサインを行った。
彼らの狙いは自社の社員の待遇改善をもたらすことのみではない。小規模なスタートアップ企業らが大手の銀行やコンサルティング企業と健全な競争を行う上で、必須となる前提を作りたいのだ。
「ストックオプションは優秀な人材を獲得したい小規模企業にとって、大きな武器だ。しかし、欧州諸国の規制はスタートアップに不利な状況になっている」と、この書簡の作成を主導したインデックスベンチャーズのMartin Mignotは話した。
書簡では、創業者が社員に譲渡する議決権を伴わない株式の規制緩和も呼びかけている。これは、創業者らが支配権の低下を恐れずに、社員たちにオプションを提供できる仕組みだ。
無議決権株(non-voting share)と呼ばれる、これらの株式の取扱いは米国でも論争となった。フェイスブックやスナップチャット、グーグルらは社員に無議決権株を供与してきたが、米証券取引委員会(SEC)はこの区分の株式が適切な企業統治の妨げになると考えている。
しかし、米国と欧州では事情が異なっているとMignotは述べた「フェイスブックの場合は、支配権を握るマーク・ザッカーバーグに比べて、大株主や投資家の議決権が小さすぎることが問題となった。しかし、欧州での状況は異なる」
無議決権株の付与が、欧州のテック領域にどのような影響を与えるかはさておき、欧州におけるストックオプションの法的取扱いが、国ごとに異なることは問題だ。今回の合同書簡が前向きな力をもたらすことを期待したい。