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Supershipホールディングス代表取締役社長CEO 森岡康一

2023年までに20社のユニコーンを創出する──2018年6月15日に閣議決定された、政府の成長戦略。そこには、日本のスタートアップ・エコシステムのさらなる強化を目指すための新たな目標が記されていた。

アメリカの調査機関が発表した、世界220社のユニコーンの内訳を見てみると、ほとんどがアメリカもしくは中国の企業。実際、アメリカは109社で全体の49.5%を占め、中国は59社で全体の26.8%を占める。

日本はというと過去、DMM.com、メルカリ、プリファードネットワークス(PFN)の3社しかいないと言われている。グローバルと比較すると、日本はまだまだ遅れをとっていると言わざるを得ない。

経済産業省経済産業政策局産業資金課長 兼 新規事業調整官の福本拓也は日本のスタートアップ・エコシステムについて、こう述べる。

「現在、日本には約1万社のスタートアップがいますが、グローバルに活躍しているのは一部しかない。ここ数年で、日本のスタートアップ・エコシステムは発展を遂げたことで、ブームはできたと思います。しかし、グローバルで勝てるスタートアップを生み出すには、これを一過性のブームで終わらせてはいけない。いかに『カルチャー』として根付かせることができるか、が大事だと思っています」(福本)


経済産業省経済産業政策局産業資金課長 兼 新規事業調整官 福本拓也

ブームからカルチャーへ。グローバルで戦い、勝てるスタートアップを日本から生み出していくために必要なことは何か。経済産業省が出したひとつの答えは、「有望なスタートアップを官民で徹底的に支援する」ことだった。 

日本のスタートアップを世界へ

2018年6月、経済産業省は、官民が連携しスタートアップを育成・支援するプログラム「J-Startup」を開始した。同プログラムはグローバルで打ち勝つ可能性を持ったスタートアップを徹底的に支援していくというもの。

スタートアップ・エコシステムを取りまく66名の推薦人が約1万社のスタートアップの中から一押し企業を推薦。その後、弁護士や学識者らで構成される外部審査を経て採択するスタートアップを決める。採択されたスタートアップはJ-Startupの「特待生(J-Startup企業)」として選定され、政府や大企業などのサポーターから支援が受けられるようになる。

初回は92社のスタートアップが選出。今後、官民による徹底的な支援によって、グローバルで成功するスタートアップの新たなロールモデルの創出を目指していくという。

政府によるスタートアップの支援といえば、助成金や補助金など「平等性」を重視し、薄く、広くが基本的な方針とされていた。今回、開始した「J-Startup」は方針が180度異なるもの。なぜ、政府は有望なスタートアップを徹底的に支援することにしたのか?

「官民を挙げて、有望なスタートアップの支援に取り組む国が増えてきている。そうした中で日本も有望なスタートアップにリソースを集中的に投下した方がいいのではないか、という声が挙がっていました。グローバルに戦える可能性のあるスタートアップはそこまで多くない。政府としても、きちんとスタートアップを選んで徹底的に支援することを通じて、グローバルで戦い、勝てるスタートアップを生み出す環境を作っていけるのではないか。そう思い、方針を変えて、スタートアップの支援に取り組むことにしました」(福本)

J-Startupの取り組みにおいて、特徴的なのはコミュニティを形成し、タイムリーかつスピーディに政府機関や大企業から支援を受けられる点にある。

支援の内容も資金の援助にとどまらず、事業スペースの提供や顧客、関係会社の紹介など、スタートアップは大企業のアセットを活用しながら、成長していくことができる。「こうしたスタートアップと大企業との連携にこそ、グローバルで戦えるスタートアップを生み出すチャンスがある」と福本は語る。

「大企業の中には予算がつかず、意思決定が先送りされた結果、日の目を見ずにいる有望な技術があります。ここ数年で成長してきた分野もあるが、日本がグローバルで勝てる分野は研究に基づくものも多い。その分野はビジネスを考えずにやっている人も少なくないので、もったいない。動きが早いスタートアップと技術力や経営資源を持つ大企業や研究機関が結び付けば、グローバルで戦っていけるようになると思っています」(福本)

スタートアップが大企業のアセットを活用し、さらなる成長を図る──その必要性は昔から叫ばれているものの、現実はそう簡単ではない。アメリカはM&Aによるイグジットが9割だが、日本はM&Aの数は少ない。

文=新國翔大 写真=小田駿一

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