今回話を聴いたのは、オトングラス代表の島影圭佑。「文字を読み上げるメガネ」で視覚障害者に文字を読む喜びを——。そんな想いで開発された「OTON GLASS」は目線の先にある文字を読み上げてくれるメガネである。
大学の卒業制作として、脳梗塞で失読症を患った父親のために「OTON GLASS(オトングラス)」を開発。いまは、これをより多くの人々に届けるために活動を続けている。 自らの信念のためにプロダクトを届ける起業家に見えるが、島影は他の顔も持つ。筑波大学では助教として落合陽一ら研究者と協働し、一昨年までは情報科学芸術大学院大学「IAMAS」で作品制作に打ち込んでいた。
彼を支えるルーツとは。そして彼自身はどんな未来を描こうとしているのだろうか。
実社会での実践を元に研究者と協働
──島影さんはオトングラスの代表のほかに、筑波大学での助教を兼任されています。肩書は何になるのでしょうか。
普段、肩書を求められたときは「起業家, 研究者, デザイナー」と言っています。
起業家としての使命は、OTON GLASSを求める人々に届けること。スマートフォンのアプリなどで文字を音声化するものは既にありますが、視覚障害者には高齢の方が多いこともあって、国内だとスマホを使えるのは彼らのうち約8%だといわれています(みずほ情報総研, 2013年)。眼鏡型にし目が見えづらい人にとっても使いやすいインターフェイスにすることによって、残りの92%の人々の文字を読むための選択肢を少しでも増やしたいと思っています。
いまは受注生産で、少しずつ製品としてお届けしています。2018年7月からは兵庫県豊岡市で障害をもつ方のための「日常生活用具給付事業」の対象にもなり、豊岡市在住の視覚障害者の方は低価格で購入することが可能になりました。こうした方々のレビューを元に改良を重ねながら、製品を成長させています。
研究者としては、筑波大学の落合陽一准教授が代表を務めている国のプロジェクト「xDiversity」に、筑波大学の助教として参加しています。
──何の研究をされているのでしょうか。
xDiversityでは、障害を持っている人を人工知能でいかに支援できるかということをテーマに活動しています。OTON GLASSに関してはこのプロジェクトに参加している研究者の方や学生の方と共に研究開発に取り組んでいます。
社会実装を実践している私と研究者の方とで新たに課題設定し、社会実装を見据えた研究開発や、視覚障害者や眼科医療福祉従事者を巻き込んだ調査を行っています。