経済評論家で元テレビ・コメンテーターでもあるクドローは、連邦・州・地域のいずれのレベルでも、最低賃金を定めることに反対だ。連邦レベルでの規定はひどい考えであり、「特に小規模の企業にとって妨げになる」という。
一つの方法があらゆる場面に有効に働くという発想が非現実的だというクドローの主張には、適切な面もある。例えばマサチューセッツ州では、州の最低賃金が11ドル(約1240円)で、段階的に15ドルに引き上げることが予定されている。ただ、筆者の自宅がある同州西部の地方部の経済は、州都ボストンとは全く異なる。必要な生活費にも差がある。
地元で小規模の事業を営む友人や知人たちの中には、従業員に時給14~15ドルを支払っている人もいる。だが、多くはそれほどの賃金を支払っていないないし、恐らく支払うことができない。
ボストンには、それぐらいの給料を出すことができる中小企業もあるのだろう。それでも州内のその他の地域では、状況が異なる。時給15ドルの最低賃金に耐えるのは難しい事業者が多いと考えられる。
また、米国では酪農家が厳しい状況に置かれている。牛乳は供給過剰で、価格はばかげているほど安い。彼らは連邦政府の補助金に頼りながら、事業を続けている。利益率は痛ましいほどのレベルだ。急に出費が増えれば、多くの人が経営を続けられなくなるだろう。2000年以降、およそ4万2000軒の酪農家が廃業している。
問題は「中小企業の低賃金」ではない
最低賃金は、社会に幅広く影響を及ぼす問題だ。政治家たちは、本当に守りたいのは多額の選挙資金を寄付してくれる大企業であるにもかかわらず、それをごまかすために中小企業の話を持ち出している。
最低賃金が中小企業だけにとっての問題であるかのように偽ることは、不誠実だ。クドローは減税をすれば、つまりそれによって大企業がさらに利益を積み上げることができれば、賃金はいずれ上昇するはずだと主張する。だが、実際にそれが起きるのはいつだろうか?