女性たちの怒りがうねりとなるか、米中間選挙で試される「良識」

2018年1月にシカゴで行われた「ウーマンズ・マーチ」 (Photo by Bilgin S. Sasmaz/Anadolu Agency/Getty Images)

トランプ米政権に初の審判が下るときが迫っている。11月6日に行われる中間選挙(上下両院議員や州知事などの選挙)で、与党共和党が上院(定数100)と下院(同435)で過半数を維持できなければ、トランプ大統領の残り任期2年間の行動は制限されることになる。

勝敗を左右する要素のひとつは、トランプ氏の女性蔑視やセクハラ疑惑に対する全米の女性の怒りだ。ただ、2016年の大統領選の結果が示す通り、女性の動向が実際の投票に結びつくかどうかは予断を許さない。
 
野党民主党の下院予備選には、前回の中間選挙より約500人多い約1500人が出馬、このうち187人が女性候補だ。ニューヨーク州で1年前までレストランで働いていた新人オカシオ・コルテス氏が当選すれば史上最年少(29歳)の女性議員が、ミシガン州で予備選を勝ち抜いたラシーダ・タレイブ氏が勝てば史上初の女性イスラム教徒の議員が、それぞれ誕生する。

今回、共和党候補を含めると上院選(改選議席は35)の女性候補は23人、下院選には史上最多の239人の女性が立候補する。
 
共和、民主両党が戦いの佳境で「女性」に神経をとがらせるのは、共和党が10月6日、性的暴行疑惑が浮上しているブレット・カバノー最高裁判事の承認を強行し、各方面に波紋を呼んだためだ。


握手するトランプ米大統領(右)とブレット・カバノー連邦高裁判事(Getty Images)

ワシントン・ポスト紙の世論調査によると、カバノー氏の承認プロセスによって、33%が「民主党支持に傾いた」と答え、「共和党支持に傾いた」の27%を上回った。女性に限定すると、民主党支持に傾いた人が40%、共和党支持に傾いた人が26%と、明確な差がついた。

世界的人気の米女性歌手テイラー・スウィフトさんはインスタグラムを通じ、中間選挙で「民主党候補を支持する」と表明。彼女が投票に行くよう呼びかけて以降、有権者登録が急増している。

上院は共和党、下院は民主党か

ここまで書き進めると民主党有利の印象となるが、「『反トランプ』に立ち上がる女性たち」の構図を素直に受け入れられないのは、筆者だけではないだろう。

トランプ氏は16年の大統領選でも、分別のある成人男性なら決して人前で口にしないような性交渉をめぐる発言が明るみに出て、女性票の多くが、対立候補のヒラリー・クリントン氏へ流れるとみられていた。

しかし選挙の出口調査によれば、事前の報道とは異なり、女性全体の約40%(白人女性の約50%)がトランプ氏に票を入れ、クリントン氏は選挙人の数で圧倒的な大差をつけられた。米国勢調査によると、16年の大統領選で投票した男性は約6380万人で、女性は約7139万人だった。
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文=水本達也

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