そのなかでも代表的なワイナリーが、リッジ・ヴィンヤーズ(Ridge Vineyards)。住所はアップル本社と同じクパチーノだが、山の中にあり、30分ほど山道を運転すると、ようやくワイナリーに到着する。眺めが抜群で、天気の良い日には、シリコンバレーやサンフランシスコ湾を一望できる。
週末には、ワイナリーのピクニックテーブルでリッジのワインを楽しむ地元の人で賑わう。リッジは、1986年から大塚製薬などを傘下に持つ大塚グループがオーナーとなり、日本との繋がりも深い。
なかでも赤ワインの銘柄「モンテベロ」は、サンタクルーズ山地の自社畑で収穫されるブドウから造る、カベルネ・ソーヴィニョンをベースにしたボルドー・ブレンドで、リッジのトップワインだ。
ワイン史に名を残す名ワイン
それを裏付ける素晴らしいエピソードがある。1976年、パリで、イギリス人のスティーヴン・スパリュア氏により、フランスワインとカリフォルニアワインをブラインドで評価するイベントが開催された。審査員は、当時のフランスのワイン業界で著名な人ばかり。結果は、ボルドーの1級シャトーやブルゴーニュの一流ドメーヌを差し置いて、赤白ともに、カリフォルニアワインがトップに選ばれるという衝撃的なものだった。
これは、のちに「パリ・ティスティング」や「パリスの審判」(Judgement of Paris)と呼ばれ、当時無名だったカリフォルニアワインの実力を世界に知らせることとなった出来事として、今でも語り継がれている。
このイベントでは、カリフォルニアを代表するワインとしてリッジのモンテベロ1971年も選ばれた。この時の結果は5位。そして、10年後の1986年、30年後の2006年、リターンマッチと称して、同じワインが再度評価された。その結果、モンテベロ1971年は、1986年には2位、2006年にはトップに選ばれるという快挙を成し遂げた。
特に2006年の回では、熟成を経てポテンシャルを発揮するボルドーの1級シャトーを凌いでの首位獲得で、モンテベロの品質の高さと熟成ポテンシャルが証明される結果となった。
リッジの強みは独特のブドウ栽培条件と一流の醸造家
このモンテベロの畑があるサンタクルーズ山は、太平洋からの影響により朝晩の寒暖差が激しい。日中の強い日差しによりブドウの成熟度は高まるが、比較的冷涼な気候でブドウの糖度は上がり過ぎず、最終的なワインのアルコール度数は抑えられ、さらにブドウに酸が保たれる。
土壌は、カリフォルニアでは珍しく、石灰岩(ライムストーン)が広がる。石灰岩は、ブルゴーニュ地方など銘譲ワイン産地でよく見かけられる土壌だ。その畑には樹齢の高いブドウの木が多く植わっている。栽培方法にもこだわりがあり、環境に配慮した持続可能な農法を採用し、大部分の畑は有機栽培の認証を得ている。