大企業のサプライチェーンに参画せよ!
創業10年以内のスタートアップ企業では、意思さえあれば多様性の数字を改善するのは比較的たやすいかもしれない。しかし、長年かかって築き上げてきた大企業を核とするサプライチェーンを変えるのは簡単ではない。
世界の人口の50%、消費財購入の80%を決定していると言われる女性。にもかかわらずグローバル大企業がサプライヤーに費やす年間100兆円のうち女性が経営する企業へ支払う金額はわずか1%。そんな数字をチャンスと捉えるのが、ワシントンを拠点とするNPOウィーコネクトインターナショナル(以下WEConnect)のCEO、エリザベス・ベズケスだ。
シングルマザーに育てられた彼女は、女性たちはもっとチャンスを与えられるべきだと感じていた。07年、NPOで色々な国の女性に実際に話を聞き、ビジネスの課題を調べていたベズケスはあることに気が付いた。女性たちには指導力もある、資金へのアクセスもある、テクノロジーを利用して利益率を高める起業家としての能力もある、営業やマーケティングの予算を立てる能力もある、しかし問題は「市場へのアクセスが乏しい」ことだった。
「女性たちに何が一番必要か聞いてみたら、製品やサービスを『売りたい』と言われました。ビジネスが成長するため、彼女たちの起業家としての情熱、その双方からの言葉だったと思います」
現在は世界100カ国にわたる7,000の女性が経営する企業と80の大企業が登録、査定とデータベースの運営、大企業とのマッチングを行っている。
「クライアントの方が多様性のあるサプライヤーを求めているんです」。そう話すのは、インドのスタートアップ集積地、バンガローで15年にITスタッフとコンサルティングサービスを行うジュエルトゥワッツを起業したプリティ・サワンだ。サワンは顧客のアクセンチュアからWEConnectに登録すべきだと勧められた。
サワンが提供するサービスはIT技術者の「ヒューマン・クラウド」。世界でエンジニア獲得競争が過熱する中、IT人材の宝庫であるインドという地の利を生かして複数の企業がエンジニアをグローバルにシェアできる仕組みをつくった。現在はインド、アメリカ、オーストラリア、シンガポールと海を越えて人材と顧客をつなげる。「世界からエンジニアの人材不足をなくしたいと思っています」。
インドは主要国の中でも女性のビジネスへの登用が進んでいない。そんな中、ジュエルトゥワッツは約1800人の社員のうち約60%が女性、約1,200人のエンジニアに限っても35〜40% と、テック業界では驚きの数字だ。ソフトウェア企業のほか、JPモルガンチェースやBNPパリバといった投資銀行など200社以上の顧客を持つ。
「女性を採用するのにバイアスはありません。あくまでもメリット・ベースです。しかし採用したら、彼女たちに手を差し伸べ、適切なトレーニングをしています」。クライアントから多様性のあるスタッフを期待され、それに応えているという。「私たちは女性を成長させるコツを知っています。クライアントの人材プールで多様性の手助けができます」。
サプライチェーンの中で女性が経営する企業は「見えないだけ」と話すのは前出のWEConnectのCEO、エリザベス・ベズケスだ。「女性起業家も物事をより大きく考え、行動に移すことが必要です」。そのWEConnectは今年、インテル、ジョンソン・エンド・ジョンソン、アクセンチュアらの協力を得て、日本に拠点を開設する。
「日本のトレンドを見ていますが、多くの女性が自分にも起業が『可能だ』とマインドセットが変わり、行動をはじめています」。教育レベルも高く、以前からその高い潜在的な可能性を感じていたが、今が上陸の最適なタイミングだと意気込む。