ブロックチェーン×マイノリティ
ブロックチェーンに関わる人の91%が男性、9%が女性(コインダンス調べ、2018)。「ブロックチェーンはまだ新しい技術。今であればゼロから1,000を学ぶのでなく、ゼロから5を学ぶだけで済みます」。
そう話すのはサンフランシスコ在住のデザイナーで、ブロックチェーンのDapps(分散型アプリケーション)の開発ツールを提供するスタートアップに参画する岩崎紗也、27歳だ。ブロックチェーンはあくまでもインフラであり、そこからどのようなアプリケーションを作るか、誰でもどこからでも使える「人中心の」デザインとユーザビリティを実現できるかが重要である、と岩崎は言う。「多くの議論から、そのポイントが抜け落ちているのをよく見るんです」。
とあるイベントに参加した際、著名なブロックチェーン企業の創業者の言葉に驚いた。技術についての知識や興味がない将来のユーザーにどのようなサービスを提供できる可能性があるか、との会場からの質問に「我々は今システムをつくっている段階であり、時が来たらそのことを考える」と答えていたのだ。「まるで、誰も人の住むことができない美しい街を造っているようです」(岩崎)
2015年、スタンフォード大学院の教育学部でデザインとテクノロジーを学んでいた岩崎は、ブロックチェーンの魅力に取りつかれた。
「学べば学ぶほど、メインストリームから疎外されたコミュニティや、サービスが行き届いていない地域に大きなインパクトを与えることができる技術だと思いました」
国連で働いていた父親の仕事の都合でコンゴやミャンマーで育ち、金融など多くの面で不便さや不公平さを痛感していた岩崎は、その可能性に心が躍った。しかし、イベントなどで出会うブロックチェーンに関わる人はほぼ男性、女性は1割にも満たない。さらに、まだ発展途上で技術的な側面が強い分野なだけに、知識がないと入っていけない。
「私は知識があったのでコミュニティからも受け入れられましたが、もっと『知りたい』と思い、好奇心を持って質問をしている人が疎外されているのを何度も見ました」
異なるバックグランドを持つ人たちが議論に入ることもできない。ブロックチェーン本来の民主的意味合いが薄れてしまうのではないか。デザインコンサルティング会社IDEOが運営するスクールIDEOUのアシスタント講師でもあった岩崎は、ブロックチェーンの知識がない人たちでも気兼ねなく質問できるようなイベントや、参加者にマイナー、アタッカーの役割などを演じてもらい、マイニングやハッシュの仕組みを体で知ってもらうワークショップを開いた。
問題意識をブログに書いて公開すると、大きな反響があり、自身や仲間の一方的な契約形態を考えたいと、あるNFLのチームの選手からも連絡があった。多くの友人がいるミャンマーでは既にブロックチェーンコミュニティは300人規模に広がっている。アフリカ系アメリカ人の女性で友人であるデイジー・オジムは、既存の医療システムから零れ落ちる少数派のための少数派によるヘルスケアシステムとコミュニティをつくった。
「現在の社会システムは、西欧の一部の国々の、知識とテクノロジーを持った人たちがつくりました。ブロックチェーンが同じようにならないとは、誰が言えますか?」