──音波を記録して、キャンバスに描くことはどうやって思いついたのですか?このテクニックは初めて見ました。織物との繋がりはなんですか?
フィラデルフィアの「ファブリックワークショップ」というアトリエでプロジェックトをしました。アイディアはそこから生まれました。
産業、機械など、色々なところから影響を受けて作品を手がけてきました。
それと、私たちの周りにある、感覚器官がもたらす経験についてもよく考えています。建築との触れ合いや、光の溢れる宇宙への思いを馳せることで得る感覚ですね。
その中で、音にとても興味を引かれましたんです。触れることのできないものですが、それを手に取れるようにしたかったのです。
──今の時代は、センサーとテクノロジーの融合は当たり前ですが、実は感覚というものはとてもアナログですよね。
矛盾してはいないのですが、物質と非物質の微妙な関係があって、儚いものです。私にとって感覚とは、テクノロジーの歴史に埋もれているような、そして未来を向いているようなものです。
──音波に歴史を刻んでいるようです。今この瞬間もアートとして残せますね。
「今」という瞬間のスナップショットのようですね。テクノロジーが、この瞬間にもう古いものになっているという感覚です。一瞬をフリーズしてイメージに収めるという意味では、私はポートレートも同じように好きですよ。
──無色の音を、どのように描いているのですか?
録音して、特別なプログラムを使って音をビジュアルイメージにするんです。音波そのものの画像が黒と白だけで出てきます。
そこに色をデジタルファイルのようにつけていきます。それを織物工場に送り、他のレイヤーにループして織るんです。作品上の情報が増えたり削られたりするんです。
──コミュニケーションの擬人化ですね。
色々なタイプの「トランスレーション(翻訳)」を考えた時、テキスト、インタビュー、ビデオ、絵画が介するのは人ではないんです。それは何かのエッセンスなんです。
「トランスレーション」を何回かすると増幅したり、織物の糸の合間に消えていくものがあります。だから織るというメタファーが私は大好きです。隠されたメッセージがそこにはあります。
──録音場所はどうやって決めるのですか?
毎回違った場所を選んでいます。とてもプライベートな場所も候補になるので、なかなか難しい(笑)。なので色々なネットワークを使って探します。
日本ではトヨタの工場の音を録音しました。そこで、トヨタが織物工場として始まったことを知ったのです。とても嬉しくなりましたね。様々な音を録らせてもらいました。