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2018.09.08

日本人アーティスト、ミカ・タジマはなぜNYで高評価を集めるのか

昨年は東京のギャラリーTARO NASUでも個展「TOUCHLESS」を開催した。"Human Synth" 2017 (c)Mika Tajima Courtesy of TARONASU


──音波を記録して、キャンバスに描くことはどうやって思いついたのですか?このテクニックは初めて見ました。織物との繋がりはなんですか?
 
フィラデルフィアの「ファブリックワークショップ」というアトリエでプロジェックトをしました。アイディアはそこから生まれました。

産業、機械など、色々なところから影響を受けて作品を手がけてきました。

それと、私たちの周りにある、感覚器官がもたらす経験についてもよく考えています。建築との触れ合いや、光の溢れる宇宙への思いを馳せることで得る感覚ですね。

その中で、音にとても興味を引かれましたんです。触れることのできないものですが、それを手に取れるようにしたかったのです。

──今の時代は、センサーとテクノロジーの融合は当たり前ですが、実は感覚というものはとてもアナログですよね。
 
矛盾してはいないのですが、物質と非物質の微妙な関係があって、儚いものです。私にとって感覚とは、テクノロジーの歴史に埋もれているような、そして未来を向いているようなものです。
 
──音波に歴史を刻んでいるようです。今この瞬間もアートとして残せますね。
 
「今」という瞬間のスナップショットのようですね。テクノロジーが、この瞬間にもう古いものになっているという感覚です。一瞬をフリーズしてイメージに収めるという意味では、私はポートレートも同じように好きですよ。
 
──無色の音を、どのように描いているのですか?
 
録音して、特別なプログラムを使って音をビジュアルイメージにするんです。音波そのものの画像が黒と白だけで出てきます。

そこに色をデジタルファイルのようにつけていきます。それを織物工場に送り、他のレイヤーにループして織るんです。作品上の情報が増えたり削られたりするんです。
 
──コミュニケーションの擬人化ですね。
 
色々なタイプの「トランスレーション(翻訳)」を考えた時、テキスト、インタビュー、ビデオ、絵画が介するのは人ではないんです。それは何かのエッセンスなんです。

「トランスレーション」を何回かすると増幅したり、織物の糸の合間に消えていくものがあります。だから織るというメタファーが私は大好きです。隠されたメッセージがそこにはあります。
 
──録音場所はどうやって決めるのですか?
 
毎回違った場所を選んでいます。とてもプライベートな場所も候補になるので、なかなか難しい(笑)。なので色々なネットワークを使って探します。
 
日本ではトヨタの工場の音を録音しました。そこで、トヨタが織物工場として始まったことを知ったのです。とても嬉しくなりましたね。様々な音を録らせてもらいました。
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文=Yuri Yureeka Yasuda

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