ZOZO前澤友作も注目するアーティスト 井田幸昌の創作哲学 #30UNDER30

アーティスト 井田幸昌


──井田さんの作品は、フォルムが崩れていたり、驚くような色使いだったり、「外界そっくり」に描いているわけではありませんね。だとすると、はたして何を描いているということになるのでしょう?
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外界というのは、人の認識次第で変わってしまうもの。目で見ている世界も頭の中にあるイメージも現実ですが、どう認識しているかは当人にしかわかりません。僕は、僕自身がその日感じたリアリティに身を委ねている。自分の目で見たものも、頭の中にあるものも、忠実に描きたい。それが、僕がやろうとしていることです。

実際には、いつも何かを探りながら描いている、という感覚ですね。手を動かしながら、対象のことを知っていく。そうして、その対象を自分の中で昇華させられたときはたまらなくうれしいし、人に自慢したくもなる。

そんな状態になりたくて、いまはほとんど毎日アトリエにこもって、ずっと描いています。音がなくて静かな夜を徹して描いていることが多いです。
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──今後、作品はどう展開していくのでしょう。

最近は歴史的な事象に興味があって、第二次世界大戦のころの画像をインターネットから引っ張ってきて作品化したりしています。

「一期一会」と分かりやすく言っていますが、「時間」という考えが根本にあります。人をメインで描いているので、必然的に生と死についてよく考えます。


人間に限った話ではないですが、生き物はいつの時代も他の存在との関わり合いの中で生きてきたはずで、それが生の本質なんじゃないかという気がします。そのあたりに対する表現を、今後はしていきたいたいと思っています。

他にもやりたいことはたくさんあるんですが、言葉にするより、ちゃんとカタチにして示していきたいです。

──20代のうちに成したいことや、目標などはありますか?

特に具体的な目標を置いたりはしていないんですよ。というのも、目標はずっと先の世界にあって、それに向かって毎日制作に明け暮れています。そうしていれば、道半ばで死んでも、自分はここまでかって、納得できるんじゃないかなと。

自分と向き合ってつくり、日々やることをやっていれば思考はあとからついてくる。この順番は間違えてはいけないなと思います。 誠実に目の前の事象と対峙し、問題を一つずつ解決していく。その先に、きっと今の僕が想像し得ないような未来が待っているはずです。 それを信じています。 言えば、目標を常に超えていくこと。 それが目標かもしれませんね。


Forbes JAPANはアートからビジネス、 スポーツにサイエンスまで、次代を担う30歳未満の若者たちを表彰する「30 UNDER 30 JAPAN」を、8月22日からスタートしている。

「Art」カテゴリーで選出された、アーティストの井田幸昌以外の受賞者のインタビューを特設サイトにて公開中。彼ら、彼女たちが歩んできた過去、現在、そして未来を語ってもらっている。



井田幸昌◎1990年鳥取県生まれ。2016年東京芸術大学美術学部油絵専攻卒業。2016年、VOCA展2016に出展、また現代芸術振興財団が主催する第3回CAF賞で名和晃平賞を受賞。

文=山内宏泰 写真=小田駿一

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