本特集では、「Business Entrepreneurs(起業家)」「Social Entrepreneurs(社会起業家)」「The Arts(アート)」「Entertainment & Sports(エンターテイメント&スポーツ)」「Healthcare & Science(ヘルスケア&サイエンス)」の5つのカテゴリーを対象に、計30人のUNDER30を選出。 選出にあたって、各カテゴリーに第一線で活躍するOVER 30を迎え、アドバイザリーボードを組織。
彼らに選出を依頼した。 今回「The Arts」部門のアドバイザリーボードのひとりに、彫刻家 名和晃平が就任。
アートは競争するものではないということは承知の上で、日本の現代アート界の「エース」を挙げるとすれば、名和晃平で異論はないだろう。「PixCell」という概念をもとにさまざまな表現に取り組み、美しさと思想性を兼ね備えた作品を生み出し続けてきた。
現在ルーブル美術館で開催している「ジャポニスム2018:響きあう魂」にも作品を展示している名和に、若き日に抱いていた思いと、後進へのメッセージを聞いた。
日本で現代美術をすることが不安だった
僕は学生時代が人よりずいぶん長かった。29歳まで大学にいて、研究や創作活動をしていましたから。アーティストになる覚悟はすでにしていたのですが、アーティストとして生活していく準備がまだ足りないことも痛感していた。だから、態勢が整うまでは大学の施設を利用していこうと考えていたんです。
学部生から大学院に進んだけれどまだ足りなかったし、博士課程に進んでもまだまだだと思っていました。卒業する時期になってようやく、ちゃんとアートのフィールドでやっていこうと心に決めることができました。この長い準備期間は、今の自分の土台になっていると感じます。
ルーブルビラミッド内に展示されている作品:「Throne」(2018, photo by Nobutada OMOTE|SANDWICH)
そんな準備過程を経ることになった理由は、日本で現代美術をやることがそれだけ不安だったからです。成功モデルがほとんど見当たらないので、どうやって創り続ければいいのかイメージすらできない。アーティストにとっては不安な状態がモチベーションになることもあるので、良い悪いは一概に言えないのですが。
リスペクトしたくなる作品を残した先人がいないわけではなかった。そうした先人たちの存在が、創作していくうえでの心の支えになってくれました。
それに、ロンドンへの留学体験も大きかったですね。ロンドンを拠点にヨーロッパを周っていましたが、アートが社会にしっかりと根づいていることを実感できました。アーティストもみな、常に一定の注目を浴びながら活動している。アートはこうもあり得るのかと、希望を持つことができました。