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NPO法人WELgee代表 渡部清花

難民の受け入れに積極的ではないここ日本で、WELgeeは彼らを友だちのように迎え入れる。どんな人にもラベルを貼らないこと。ひとりの人間として接すること。人種も宗教も超えて人と人をつなぐ、「歓待の精神」。


2016年10月。あの日のことを、いまでもよく覚えている。私が彼女と知り合うきっかけになった出来事が、東京大学のホールで起きた。その日は、コンゴ民主共和国から来日したデニ・ムクウェゲ医師の講演会だった。ムクウェゲ医師は内戦状態のコンゴで蔓延する性暴力の被害女性を必死に治療し続け、ノーベル平和賞の候補にも挙げられてきた人物である。

彼が講演を始めようとしたときだった。突然ひとりの黒人男性が彼の前に立ちはだかる。彼は聴衆に向かって「性暴力 日本の株式会社も共犯」と書かれた白い紙を掲げ、「コンゴの問題には日本の企業や消費者も間接的に加担しているのだ」と訴えようとしていた。

予想外の事態に会場が騒然となる。彼が会場の外へと引っ張り出されるまでの間も、外国語での口論は止まらなかった。そんな異様な状況のなか、突然、左の方から激烈な怒号が鳴り響く──

「お前の話を聞きに来てるんじゃねえんだよ! 帰れ!」

壮年の男性から発せられた、大きな声だった。その怒声のあまりに暴力的な威力に、ホール全体の空気は一瞬で凍りついた。その日同じ会場にいた渡部清花は、このときの感情を「怒鳴り声に足が震えた」と題したブログにこう綴っている。

「あのとき、会場で何が起こっているか、きっと誰にもわかりませんでした。彼が誰で、何を言っているのかもわかりませんでした。そんななかで、あの言葉を浴びせた人がいたことに、私はショックを受けました」

理解できない他者との間にシャッターを下ろし、「ウェルカム」ではなく「帰れ」と言うこと。誰からとも知れないあの怒声のことを、私はいまでも忘れられずにいる。

Welcome Refugee(WELgee)

彼女が代表を務めるNPO法人WELgeeでは、日本に来た難民向けのホームステイ事業、シェルターおよびシェアハウス事業、参加者が難民と直接対話できるサロン事業などを展開している。4人のコアメンバーは全員20代の若者だ。

団体名は「Welcome」と「Refugee」を合わせてつくった。難民受け入れに積極的でない日本の現状に照らして、「難民を歓迎する」というその名は鋭いコントラストをなしている。この国では、難民認定申請者が認定を受けられる可能性はほぼゼロに近い(17年の難民認定申請者数は1万9628人。認定者数は20人だった)。

母国を命からがら逃れ、日本で望みの薄い難民認定申請の結果を待つ外国人たち。彼らは在留資格や経済的基盤の脆弱さを抱えながら、異国の地で未来の見えない不安定な日常を送っている。

「寒い冬には山手線に何周も乗ってやり過ごしている人もいます。また終電後には、マクドナルドで朝までコーヒー1杯だけで過ごす人も多いんです」

文=望月優大 写真=上澤友香

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