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2018.08.28 10:00

若いマレーシアの小売市況、「ストリート・スマート」がキーワード

Noppasin Wongchum / Shutterstock.com


鍵を握るのは「中食」
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マレーシアでもイーコマース市場は伸びており、政府のICT関連の団体もイーコマース化の促進にコミットしている。一方で、ひき続き増えているショッピングモールとのすみ分けについては、現場の担当者も「今後どうなっていくのか不分明」というのが本音のようだ。

そんな中、飲食市場については可能性があるという。鍵となるのは「中食」事業だ。

「中食」とは、料理店など食べる「外食」と家庭で調理して食べる「内食」の間にあるもので、すぐに食べられるものを買う、いわゆる「テイクアウト」。この中食事業の盛り上がりは、いまや世界の各都市でも見られるグローバルトレンドで、ニューヨークやロンドンはもちろん、ナイロビやヨハネスブルグのような新興都市でも、多国籍料理を販売するカジュアルなフードトラック的店舗は人気だ。
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「マレーシア人は外食が大好きで、その場で軽く食べたいというニーズあります。日本の企業では、イオンがそのあたりをうまく展開していて、簡単に食べられる揚げ物などの売場横にイートインスペースを設けています。もともと日本の縁日のような屋台文化があるので、買ったらすぐ食べたいというニーズに応えています」と前出の野副は説明する。

クアラルンプールの直後に訪れたメルボルンでも、ミニブリトー風なスナックとして、立てて売られている手巻き寿司ショップが人気だったが、新規開拓市場においては、日本食の展開も、本物感よりは「わかりやすいノリ」がひとつの鍵なのかもしれない。食はグローバルにエンターテインメント化している。

「ストリート・スマート」な市場開拓を

今回の滞在では、中心地にあるコンベンションセンターで開催されていた小売とフランチャイズ事業の国際展示会を見ることができた。展示会には日本のたこ焼きチェーンが出展しており、他の出展企業でも飲食系に活気が見られた。



食というキーワードは受け入れられやすいが、事業進出においては、現地市場にどう近づけるかがやはり重要だ。

「日本人にありがちなのは、日本から皆でやってきて、日本コンソーシアムのような感じで、日本人だけのグループを組んで、(日本食レストランなどの)事業展開をしてしまうというケース。マレーシア人から見ると、不思議だし、知らないブランドばかりでは、利用しづらい」と野副。ユニークな事業モデルをそっくりそのまま真似されないためにも、現地パートナーとの協業が必要になるという。

数カ月前、クールジャパン機構の投資案件でもあった「イセタン・ザ・ジャパンストア・クアラルンプール(Isetan The Japan Store Kuala Lumpur)」の、三越伊勢丹HDによる完全子会社化と経営再建のニュースが発表されたが、百貨店全館を日本の商品で埋めるというマーチャンダイジングの難しさが、敗因のひとつだったのかもしれない。



実際に訪問してみると、内装へのこだわりなどが随所に見られる美しいショップではあったが、現時点で商業的な活気を感じられるフロアは、レストランやカフェのような飲食関連エリアのみという印象だった。


イセタンのレストランフロア

成功している日本の企業として野副が注目するのが、ブックオフコーポレーションの子会社である現地法人が展開するリユースの店舗「ジャラン・ジャラン・ジャパン(Jalan Jalan Japan)」だ。

潰れかけのショッピングモールの上階など商業施設としてニッチな立地で、「Made in Japan」ではなく「日本で使われた中古品」という商品展開で、日本の高品質のイメージをうまく使いつつ、整理された店内で、日用品を展開している。

現在マレーシアに3店舗を展開。「現地の特定の市場をしっかり捉えて受け入れられている、よい事例です」と野副は分析する。



このように、置かれた環境から物事を吸収して、現地のニーズに柔軟に対応するスタイルは「ストリート・スマート」的なアプローチだといえる。東南アジアでもアフリカでも、新興市場における成功に欠かせない要素となっている。

今回クアラルンプールで見た日本企業の商業展開はそれぞれコントラストがあったが、特にブックオフの「ストリート・スマート」的な動きには、日本企業の海外展開におけるヒントになりそうだ。

連載 : 旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
過去記事はこちら>>

文=MAKI NAKATA

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