だが、日焼けとそれによる炎症について、私たちは科学的にどれだけ正しく理解しているだろうか?以下、幾つかの真実について紹介する。
・ 「健康的」ではない?
「日焼けによる実質的なメリットはない。日焼けはただDNAに損傷を与え、結果としてシワを増やすだけだ。日焼けスプレーを使用する以外に、“健康的”な日焼けはない」
米国皮膚科学会のフェロー、キャロリン・ジェイコブはそう断言する。だが、日焼けの安全性についての意見は大きく分かれているようだ。
ハーバード大学医学大学院のウェブサイトには先ごろ、皮膚に関する通説の誤りを指摘する記事が掲載された。それによると、「SPF30以上の日焼け止めを塗る、最も日差しが強い時間を避ける、といった予防策を講じる限り、軽度または段階的な日光への曝露を慎重に繰り返すことは、危険ではない」という。
・ DNAの損傷は修復不可能か
長年に及ぶ公衆衛生キャンペーンにもかかわらず、欧米では皮膚がんを発症する人が増え続けている。1992~2001年の間に、罹患率は2倍に上昇した。米国では、1時間当たり平均1人が命を落としている。
皮膚がんは、早期に発見されれば治療が可能だ。だが、10代後半までに1度でも水ふくれができるほどの日焼けをすれば、悪性黒色腫(メラノーマ)を発症する危険は2倍に高まる。また、こうした状態を15~20歳の間に5回以上経験すれば、リスクは80%高まるという。日光は皮膚細胞のDNAに、さまざまな形で損傷を与えるのだ。
日焼けは予防した方がいいことは、私たちの誰もが知っている。だが、炎症を起こすほどの日焼けをしてしまった場合には、どうすればいいだろうか。前出のジェイコブによれば、「日焼けで皮膚が炎症を起こしたときは、ビタミンCやEなどの抗酸化物質や、アロエベラなどの抗炎症作用のある成分を取り入れることで、細胞を鎮静化することができる。また、ヒドロコルチゾンを含むステロイド外用薬などは、処方箋なしで購入することができる」。
ただし、これらは皮膚のDNA修復を実際に助けるかどうか、ただ単に不快感を軽減したりするだけなのか、まだ明確な答えは出されていない。
なお、紫外線を浴びたDNAの修復に役立つ複数の酵素を含むとうたった高価な日焼け止めが販売されているが、商品の有効性を裏付けるエビデンスは十分とは言えず、それらの酵素はいずれも、米食品医薬品局(FDA)の認可を得ていない。