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南フランス、ゴルド村のセナンク修道院

7月に入ると南フランスには一気にラベンダーやラヴァンダンが咲き始めます。

睡眠によいハーブとしておなじみのラベンダーですが、実は「ラベンダー(仏:Lavande)」と「ラヴァンダン(仏:Lavandin)」があるのはご存知でしょうか。その違いは育つ標高の違いによるもので、ラベンダーは標高800メートル以上の高地に育ち、小ぶりで濃い紫色の花をつける一方、ラヴァンダンは標高0〜800メートルの広域で育ち、ラベンダーよりも茎が長く、やや大ぶりで淡い紫色を咲かせます。

ラベンダーの香りは穏やかですが、ラヴァンタンはやや強め。1リットルのエッセンシャルオイルを蒸留するのに、ラベンダーは130キロもの花を必要とするのに対し、ラヴァンタンは40キロ。やはり値段も倍くらい違います。

南仏でラヴァンダンが有名な場所はヴェルドン渓谷すぐ近くのヴァランソール、ラベンダーが有名なのはリュベロン地方のソーという村です。また、「フランスの最も美しい村」にも選ばれたゴルド村もラベンダー畑の名所。ここにシトー派のセナンク修道院という場所がありますが、神秘的なロマネスク建築は、シーズンになると多くの観光客であふれかえります。



個人的に好きなのはソー村。この村にはもうひとつ、スペルト小麦という名物があり、ラベンダーの紫色の絨毯と同じ時期に、スペルト小麦の黄金畑を眺めることができます。そこで、スペルト小麦で作ったコーンにラベンダー風味のアイスクリームをのせて食べるのが王道です。

「一面紫のラベンダー畑で写真を撮りたい」というのであればタイミングが肝心です。早過ぎると咲いておらず、7月15日を過ぎると収穫が始まってしまいます。そしていざ畑に入る際には、蜂には十分気をつけていただきたいものです(笑)。

感覚に刻まれるお土産のチカラ

修道院ではラベンダーを使った商品がたくさん販売されていました。精油や石鹸、蜂蜜や焼き菓子、カレンダーやポストカードなどなど。ちなみに僕は修道院でラベンダーの精油、村でドライフラワー用のラベンダーを購入し、この夏に快適に眠るためのセットを整えました。



南仏の夏は暑いながらも日本のように多湿ではなく、クーラーがなくてもぐっすり寝ることができますが、安眠効果のあるラベンダーを枕元の置くとより心地よく眠れます。また香りは脳に直接働きかけるため、楽しかった旅の思い出を喚起し、寝てる間にいい夢を見せてくれそうです。

訪れた地で買ったお土産は、自分の心にも記憶にも残るものだと思いますが、僕は香りや味などの感覚と一緒に刷り込まれることが重要でないかと思います。

料理はその場で食べるもので持ち帰れませんが、ニースのお店で僕は、土地の伝統や季節の産物を伝えることを大切にしています。それは感覚に刻まれ、また違う場所で口にしても、きっとニースでの思い出が蘇る。モノとしては残りませんが、最近は料理は最高のお土産なのかもしれないという気がしています。
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文=松嶋啓介

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