スーツケースに約3000円の料金
一例をあげると、ラスベガス空港は、発着便の増加で継続的にリニューアルを続けているが、このところ、あっという間に出発カウンターの半分が黄色のロゴで埋め尽くされた。スピリット航空という航空会社だ。「ウルトラローコスト」を掲げ、間違いなく全米で最も安い運賃を提供している。自社のホームページでは、他社より3割以上安いと謳っている。
そのため、どんどん需要を増やしているが、ウィキペディアによれば、顧客満足度は全米で最低。実際、顧客満足サーベイサイトのスカイトラックスでは、スピリット航空の満足度は10点満点中の3点だ(JALは8点)。
スピリット航空に試乗した筆者の体験でも、スーツケースを預けると約3000円かかり、椅子はリクライニングしないし、なんと機内持ち込みの荷物もラップトップバッグを超えるサイズのものには料金がかかる。機内ではアルコールはおろかジュース類もすべて有料。「トイレは5ドル札を紙幣挿入口にいれないとドアがあかなかった」という筆者の冗談は、大いにウケたくらいだ。
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ちなみにスピリット航空のシートピッチは70センチであり、これは平均的なアメリカ人には我慢の限界を超えているように見える。
「安かろう悪かろう」にも限界がある
自由貿易、自由経済を信奉する筆者としては、安全が確保されるなら、他の部分は確かに自由競争を原則とし、各社の裁量に任すのがよいと思ってきた。しかし、ちょっとそれも考え直す機会となった。ファーストフード店に行って、ハンバーガーが気に入らないからやっぱりやめたということと、航空機に乗るのとは違う。
航空会社を利用することにあまり慣れていない人もいる。日本のJALの便だと思って乗ったら、中身の機材はアメリカン航空だったということを、初めからどれだけの人が理解して切符を買っているだろうか?
選択肢を与えているからそのほうがいいのだと主張するには、大半の利用者がメインキャビンとメインキャビンエクストラとプレミアムエコノミーを正確に認識でき、さらにJALとアメリカン航空の違いがわかるようになっていることが前提ではないだろうか?
「醤油やお箸を持参し、トイレも使わない顧客は3割引にします」というレストランが現れたら、その店はネット上でさんざん叩かれ、評価は全部星1つでダントツの最低、しかしそれでも安いので商売繁盛になるだろうかと想像してみた。だけど、なんか楽しくないよね、みなさん、そんな食事。
連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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