そう、世界最長のフライトが復活するのだ。質の高いサービスと設備で有名なシンガポール航空は10月11日、ニューヨークまでの直行便を再開。乗り入れ先はニューアーク・リバティー国際空港で、まずは週3便から始め、10月後半からは1日1便に拡大する予定だ。
直行便ではあるものの、飛行距離は約1万5000キロ、飛行時間は19時間で、目的地に着くまでは丸1日かかる。それでも、今利用可能な経路と比べれば大きな時間短縮だ。シンガポールからニューヨークへのフライトには現在、最低でも1回の乗り換え(フランクフルト経由が多い)が必要で、少なくとも23時間はかかる。また、シンガポール・ニューヨーク間の飛行距離は、現在カタール航空が運行する世界最長便ドーハ・オークランド間を超える。マイレージ愛好家には見逃せないポイントだ。
しかし、こうした超長距離フライトには、乗客の苦痛に関する実験以外の意義もある。シンガポール航空に加え、カンタス航空、キャセイパシフィック航空、ユナイテッド航空などの競合企業は、乗り継ぎ便よりも約20%高い運賃を設定できる超長距離フライトに賭けている。
カンタス航空のアラン・ジョイス最高経営責任者(CEO)は、「プロジェクト・サンライズ」と呼ぶ挑戦状をエアバスと競合のボーイングに送った。目標は、ある地点から世界中どの地点にも飛べる飛行機を新たに作ること。カンタスにとっては、シドニーからロンドン(約1万7000キロ)あるいはシドニーからニューヨーク(約1万6000キロ)の直行便を実現できる機材を意味する。
現時点では、シンガポール航空のニューヨーク便が世界最長の直行便だ(後日、少し短めのロサンゼルス・シンガポール便も就航予定)。同社は以前もこのルートを運行していたものの、2013年11月に一旦中止しており、約5年ぶりの再開となる。当時使用していた機材はビジネスクラス100席のみを備えた4発型(エンジン4基搭載)のA340-500機で、積載量の大半を燃料が占めたために利益を上げることができなかった。しかし同社は今回、双発・広胴型であるA350-900ULRを採用することで、収益性改善に賭けている。