生体データで「自分を管理する」時代がやってくる

IoTウェアラブル「hamon」


熱中症は深部体温、つまり体の内部が38度台にまで上昇したときに発症すると言われている。深部体温は一般の体温計のように皮膚に当てて測ることができず、お尻の穴から体温計を入れなければ測ることができない。運動中や仕事中に深部体温を計ることなどできるはずもなく、これまで毎年のように自覚症状のないまま多くの人が熱中症になってから病院で診断を受けきた。

医療機器ではないhamonは診断こそできないが、体調の変化を知らせることは可能だ。

体と心の状態が数値でわかればアスリート自身がコーチになれる

アスリート向けのスポーツ分野については、実導入の時点でカスタマイズ化がされている。WBA世界ミドル級王者、村田諒太の知見を取り入れたボクシング用のhamonにこそ、ミツフジにしかできない“織り”の技術が光る。

肌に密着する生地で、村田の体に合わせたウェアをつくった。それを練習中、試合中に着用して生体データを集めている。すると、村田自身は調子がいいと思っていても、肉体的には不調、また、その逆のパターンもあるという。試合前のハードな減量など、精神面で追い詰められることがあるボクサーが、「心と体の相互関係」を数値で把握できるようになる日も近いだろう。

現在、ある大手ヨガ教室との共同開発が進行中だ。ヨガをする前と後ではhamonのデータが大きく異なり、効果をデータで把握することができればモチベーションになる。ヨガ人口が男女ともにはるかに多いシリコンバレーをはじめ、世界中に大きな需要はあるだろう。

自分の未来はどうしても気になってしまうのが人間の性。毎朝、テレビで血液型や星座でその日を占うより、自分の生体データが今日一日をどう管理したらいいかを教えてくれるようになるだろう。自分の体が自分を導く、「セルフコーチングの時代」がすぐそこまで来ている。

文=守屋美佳 写真=岩沢蘭

この記事は 「Forbes JAPAN 100通りの「転身」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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