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知的所有権が守られない海賊版大国、思想の自由がない独裁国家。今も中国をそう見ている人は少なくない。しかし、今ではシリコンバレーを猛追するエコシステムが整いつつある。理系の最高峰にその秘密を見た。


中国企業は情熱をもってイノベーションに取り組んでいます。日本は...残念ながらオープンさが足りず、中国や世界の現状から後れを取っているように感じます」(タススター・劉博投資総経理)

中国発のイノベーションが世界で注目を集めている。かつてはアメリカのビジネスモデルにばかり注目していた日本企業も、今や中国モデルの取り込みに躍起だ。日本のユニコーン企業の一つ、メルカリは社内研修制度を設けているが、ほぼ全社員が中国の現状を視察しているという。

思想の自由がない独裁国家にイノベーションは生まれない。ほんの数年前まではこうした見方が圧倒的だった。いったい中国に何が起きたのだろうか?多くの要因があるが、見逃せないのがファイナンスだ。

ベンチャー投資がアメリカと同様に整備され、新興企業を支えている。その好例がシェアサイクルの雄モバイクだ。昨年6月のEラウンド投資までテンセントやフォックスコン、ベンチャー投資会社などから累計10億ドルもの資金を調達し、急拡大の原資としてきた。そして今年の4月、宅配大手の美団点評に買収され、イグジットを果たした。

スタートアップを支える “学校企業”

中国のベンチャーファイナンスはどのようにイノベーションを支えているのか。中国の老舗投資会社であるタスホールディングス(以下、タス)の陳鴻波常務副総裁、同社旗下のベンチャー投資会社であるタススターの劉博投資総経理に聞いた。

2000億元(約3兆4000億円)もの資金を運用するタスは、北京大学と並ぶ名門、清華大学の「学校企業」だ。1980〜90年代にかけ、政府機関改革が進むなか、独自財源確保のために中国の大学は企業を設立している。タスは94年に清華大学出身の企業が拠点を置くサイエンスパーク、清華科技園として出発。2004年に現社名に改称している。

「学校企業は当初、経費を稼ぐために設立された。ラジオの改良など大学の技術を使ったビジネスが主流だ。だが00年代に入ると、高度な知識で中国の発展をサポートするように役割を変えた」と陳副総裁。

現在、清華大学旗下の持ち株企業、清華ホールディングスは、タスに加えて半導体大手の紫光集団、情報・エネルギー技術の同方株式という三大企業を傘下に擁している(組織図参照)。


清華ホールディングス組織図


出所:タスホールディングス陳鴻波常務副総裁提供

今では大学のために稼ぐのではなく、民間資金でハイテク企業を育成するのが主な役割となった。またインキュベーション(企業孵化)の役割も身につけた。創業初期と安定期では経営者に求められる資質は違う。その段階に合わせた最適の経営者を選抜することもある。また若者を対象としたアントレプレナー教育も手がけている。

文=高口康太 写真=鷲崎浩太朗

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