こうして中国にベンチャー投資が誕生したのである。もっとも、「その数は95 年に10社、00年に100社、05年で500社と限られていた。急増するきっかけとなったのが、14年のプライベート投資ファンド管理監督暫定法の公布だ」と、劉総経理は指摘する。
法整備が進んだことで、ホットマネーは新たな収益源として、ベンチャー投資に殺到したのだ。モバイルインターネットの普及に伴い、モバイル決済やシェアリングエコノミーの発展とタイミングを同じくしたことで、ベンチャー投資は儲かるとの認識も広がった。結果、ベンチャー投資機関の数は17年末に約2万3000社にまで膨れあがった。投資額も13年の400億元から17年には2000億元超へとジャンプアップしている(チャート参照)。
2016〜2017年中国創業投資市場累計投資額・件数推移
出所:私募通、2018年1月
シリコンバレーと瓜二つのベンチャーファイナンスが完成した中国だが、まだ未成熟だと劉総経理は指摘する。投資機関が増えた結果、小規模なファンドは体力がなく、企業の成長よりもイグジットを優先する傾向があるという。
また政府のIPO(新規株式公開)規制も先行きを不透明にしている。市場の希薄化を恐れてIPOの数を絞るという規制だ。そのため、上場ではなく大手企業にバイアウトしてのイグジットを目指すケースが多くなる。
問題はあるが、中国ベンチャー界隈の活況は事実。比べると、日本はあまりに保守的で、中国企業との協業を嫌うと劉総経理は冒頭のように指摘した。日本企業は技術流出の恐れから慎重になっているが、「簡単に真似されるようでは技術とは言えない。容易に模倣できないもの、他社が追いかける間にさらに先に進めるものが技術だ」と手厳しい。
それでも日中協業には大きな可能性があると陳副総裁は言う。中国マーケットが必要な日本企業、日本の技術が必要な中国企業のマッチングをタスは支援する方針だ。3月30日には日中企業イノベーション交流会「タスリンク」を開催したが、さらに日本での拠点開設、日本企業への投資も検討している。