ビジネス

2018.07.12 10:00

新時代の億万長者は「インパクト」を追う

(photo by Getty Images)



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5. ハムディ・ウルカヤ|難民援助

トルコ出身のクルド人のウルカヤは、アメリカ留学時、母がつくってくれたヨーグルトの味が忘れられず、借金をしてそのレシピを再現した「チョバニ」を2005年に売り出した。するとそれはギリシャヨーグルトとして全米でブームを巻き起こし、17年、彼の事業は10億ドルを売り上げるグローバル企業に成長した。

ウルカヤは、世界で2250万人の難民の支援に力を注ぐ。彼が創業したテント・ファンデーションは、イギリスの複合企業「ピアソン」と手を組み、シリア難民の子供向けに数学学習アプリを、また民泊サイトのエアビーアンドビーとは難民10万人分の仮設住宅の提供を試みた。またニューヨークやアイダホにあるチョバニの工場でも難民雇用を増やす。だが米国政府のイスラム圏出身者に対する入国禁止措置がそれを阻む。


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6. ジェフ・スコール|社会起業家育成

スタンフォード大学でMBA取得に取り組んでいるとき、スコールはピエール・オミダイアと出会い、彼が創業したeBayの最初の従業員兼社長となった。2001年に退社すると、それまで稼いだ何十億ドルもの資金を映画製作につぎ込んだ。その最初の成功が、アル・ゴアの気候変動をテーマにした『不都合な真実』だった。

スコールが創設した基金は2002年以来、106の非営利組織と、世界で理念を掲げて問題解決に取り組む128人の社会起業家に対し、4億7000万ドルを寄付している。その中には、マリを本拠とする非営利組織マイアグロのアヌシュカ・ラトゥナヤケが含まれている。彼は、貧しい農家が種や道具を買うために少額を貯金して自立を促すプログラムを援助する。

「映画や非営利事業にみる全ての物語には社会変革を触発する力がある」(スコール)。



7. ビル・ゲイツ|医療

マイクロソフトの共同創業者。高校生時代からコンピュータに興味を示し、PCメーカーのDECでのアルバイトを経て、ポール・アレンとともにソフトウェア会社を創業。その後、ハーバード大学に入学するも休学し、マイクロソフトを設立。同社を世界的企業へと成長させた。ゲイツは今なお、取締役会に名を連ねるが、自身の多くの持ち株は売却または手放し、現在の保有率は1.3%にとどまる。資産900億ドルは2018年のビリオネア・ランキングで第2位。

この惑星で最も気前のいいこの男は、自身が設立した基金に350億ドルを寄付。マラリア、ポリオ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、結核など公衆衛生問題での最も困難な課題に取り組んでいる。ゲイツは、最新の感染症の大流行を防ぐべく闘っている。

この4月、彼はグーグルの共同創業者ラリー・ペイジと共に、インフルエンザの万能ワクチンをつくり出す挑戦を始めた。予算は1200万ドル。「軍隊が戦争に備えるように、世界は感染症の蔓延に対する準備をしなくてはならない」とゲイツは言う。いざというときに感染症を封じ込める予備隊の結成を呼び掛けている。

パンデミックを阻止せよ

いまゲイツが最も憂慮しているのは感染症の世界的拡大だ。100年前に流行したスペイン風邪と同様の空気感染する病原体が今年発生した場合、6カ月以内に3300万人が死亡するという。危機的状況を避けるため、彼は適切な“免疫反応”の構築を呼び掛ける。

保健分野の慈善活動に対するゲイツの興味を掻き立てたのは、1993年の世界銀行の報告である。発展途上国では疾病の数は比較的少ないのに死亡率が高い数値を示していた。ワクチンの質ではなく分配するシステムに問題があると気づいた彼は、基金を立ち上げ巨費を投じて支援。すると例えばポリオの発症数は年間35万人から2016年には40人に激減した。

「成果を得られないのなら賭けには出ない」とゲイツ。そんなビリオネア・マインドに人は明日を託す。

文=ミケーラ・ティンデラ 翻訳=岡本富士子/パラ・アルタ 編集=北島英之

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