スタバは国内外にいくつもの問題を抱えている。米国で直面しているのは、市場の飽和だ。どの地区でも大抵、1〜2店舗のスタバがある。新たな店舗をオープンさせる機会が失われているということだ。
市場が飽和状態になれば、カニバリゼーション(共食い現象)が発生する。米国内で既存店売上高が伸び悩んでいることを見れば、スタバにこれらが起きていることが分かる。同社が先ごろ、国内での店舗閉鎖を加速させる方針を発表したのはこのためだ。
スタバはまた、「アイデンティティーの喪失」にも直面している。自宅でも職場でもない「サード・プレイス(第3の場所)」や「手の届くぜいたく」で知られてきたスタバだが、近年では顧客層がかつての中年世代であるベビーブーマーからより幅広い層に拡大。幼い子供を持つ家族をはじめ、あらゆる立場の人たちが利用するようになった。これは、スタバがもはやクールなサード・プレイスではなく、日常の「ファースト・プレイス」になったことを意味する。
各国での競争も課題
スタバは既存の飲食店とも、新たに開業したコーヒーチェーンとも競い合う状況にある。これまで国内外で、競争相手がほぼ存在しない中で長期にわたって成長を続けてくることができたのは、各社がスタバのビジネスモデルに対抗できなかったという簡単な理由のためだ。
競合の一部はスタバのエスプレッソをまねるようなメニューを展開(マクドナルドのマックカフェなど)。一部はサード・プレイスのコンセプトをまねた(コスタやカフェベネなど)。それでも各社は、ドリンクメニュー、店内環境、サービス、文化という4つの点の全てでスタバに勝てるビジネスモデルを構築することができなかった。
競争がほとんどない中で、スタバの売上高は急増した。2015年にはマクドナルドが減収減益に陥るなか、スタバは15%を超える水準での増収増益を記録。スタバ株に夢中だったモメンタム型の投資家たちにとっては、うれしい話だった。
だが、その状況はここ数年で変化した。米国内では、マクドナルドの「オールデイ・ブレックファスト」メニューやマックカフェとの競争が激しさを増している。そして国外では、各国で開業した地元のコーヒーショップが「サード・プレイス」モデルで対抗し、さらにスタバをしのぎ始めている。
その一例が、ギリシャを拠点とするミケル・コーヒー・カンパニーだ。国内で急速に店舗網を拡大しているほか、ここ9年間に中東地域と英国で185店舗をオープン。さらにエジプトとサウジアラビア、ドイツ、米国での開業を計画中だ。
──要するに、長期に及んだスタバの急成長は終わったということだ。同社株は、グロースからバリューに変化したのだ。