2017年は、なぜこれほど多額の寄付があったのだろうか? 慈善活動に関する報道・調査を25年以上行う米雑誌「クロニクル・オブ・フィランソロピー」は、株式市場の好調が2年続き、富裕層の手持ち金が増えたことが理由だとする。
慈善団体・活動への個人や組織の寄付額を追跡してきた同社は、「フィランソロピー50」と題した報告書の一環として、米国で最も寄付額の多い個人・夫婦50組の寄付総額を毎年発表し、慈善活動への大きな貢献を評価している。
今年のランキングで首位になったのは、またもやビル&メリンダ・ゲイツ夫妻で、4年連続のトップの座を獲得した。2人の富は、主にビル・ゲイツのマイクロソフト共同創業者、長年の最高経営責任者(CEO)としての活動から生まれたもので、昨年は48億ドル(約5200億円)近くを寄付した。
フォーブスの世界億万長者データベースによると、この記事の執筆時点でビル・ゲイツの保有資産は905億ドル(約9兆8500億円)で、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスに次ぎ世界2位となっている。なお、ベゾスは寄付金ランキングには入っていない。
ゲイツ夫妻が行った寄付のほとんどは、2人が設立したビル&メリンダ・ゲイツ財団に対するものだった。世界最大の民間慈善財団である同財団の基本財産は2016年末時点で403億ドル(約4兆4000億円)とされている。ゲイツ夫妻から同財団に贈られた今年の寄付額は、2016年の1億4140万ドル(約150億円)を大きく上回った。
今年のランキング2位は、こちらも富豪著名人夫妻のマーク・ザッカーバーグとプリシラ・チャンだ。2人の資産はザッカーバーグが2004年に設立した交流サイト(SNS)大手フェイスブックの持ち株からのもので、フォーブスはその額を約737億ドル(約8兆300億円)と推定している。ゲイツ夫妻と同様、ザッカーバーグ夫妻は自分たちの慈善団体である、チャン・ザッカーバーグ財団や、シリコンバレー・コミュニティー財団のチャン・ザッカーバーグDAF(ドナー・アドバイズド・ファンド)に寄付している。
3位にはマイケル&スーザン・デル夫妻がランクイン。昨年の寄付額は10億ドル(約1090億円)だ。受け取り先は、テキサス州オースティンのマイケル&スーザン・デル財団だった。フォーブスは、デル創業者であるマイケル・デルの保有資産を236億ドル(約2兆6000億円)と推定している。
同ランキングでは、テクノロジー業界が特に大きな存在感を放っている。ランキング上位50組のうち、テック分野の富豪は11組のみだったが、その寄付額を全て合わせると約87億ドル(約9500億円)となり、50組の総寄付額の60%に相当する。クロニクル誌は、今年のランキングにより、慈善事業の分野で高度金融からテクノロジーへの移行が続いていることが示されたと指摘している。