未来の変化に備える
ビスタはこれまで、平均5年以内に投資先企業の利払い前・税引き前・償却前利益(EBITDA)を2倍にしてきた。その責任の大部分は、シェスの肩にかかっている。シェスはこれまで、エグジットに向けてひた走ってきた。例えば14年、ビスタは支払い処理ソフトウェアメーカーの「トランスファースト」を15億ドルで買収。1年余り後、23億5000万ドルで売却している。
ビスタの投資資金は、レバレッジを織り込むと3倍になった。また、エグジットは、平均すると買収後4.7年で起きる傾向にある。これに対し、大手PE投資会社のブラックストーンのエグジットまでの期間は、平均5.7年だ。
スミスは慈善活動にも積極的だ。最近は、国立アフリカ系米国人歴史文化博物館への2000万ドルの寄付や、ビスタの最初のファンドとつながりのある財団からのコーネル大学への5000万ドルの寄付を発表した。後者は、科学研究に携わる女性やマイノリティを増やす手助けをするためのものだ。
2年近く前、スミスはミルケン研究所の年次国際会議で、「カーライル・グループ」の共同創業者、デイビッド・ルーベンスタイン、「アポロ・グローバル・マネジメント」の共同創業者兼CEO、レオン・ブラックといった買収ビジネスの守旧派大御所ビリオネアたちと肩を並べて登壇した。彼らは、10年前ならスミスに見向きもしなかっただろう。
このときルーベンスタインは、自分が取引している投資家たちは、高額な資産からのリターンが低めでも納得するようになっていると語った。それを聞いたスミスは、「その方と取引したいものですね」と皮肉でかわし、余裕と快活さをもってこう切り返した。
「次の出張先を教えてください。同行しますから」