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2018.06.28

アジアのカジノ、米中貿易戦争の巻き添えに?

Vitoria Holdings LLC / Shutterstock.com

米国と中国の本格的な貿易戦争への警戒感が高まるなか、世界各国で営業している米国のカジノ運営会社が巻き添え被害に遭う可能性が指摘されている。

2012年以降、外国へ旅行する人に占める割合が最も大きく、旅行先での支出額が最も高額に上っているのは中国人だ。中国政府はますます、国民を経済外交にうまく利用する能力を高めている。

中国の調査会社、チャイナ・マーケット・リサーチのショーン・ライン社長は、各国はそれぞれに対する中国の見方に応じて、拡大する中国の「ウォレット(財布)」から相応の分け前を受け取ることができると指摘する。

「ウォレット外交」の威力

協定や同盟などとは異なり、中国の「見方」に基づく二国間関係は流動的で、政策の転換や政権の交代によって変化する。それを示す好例がフィリピンだ。ベニグノ・アキノ前大統領は、「南シナ海のほぼ全域に自国の権益が及ぶ」とする中国の主張を受け入れられないとして、仲裁裁判所に提訴。すると中国は、フィリピン産マンゴーの輸入を禁止したほか、国民にフィリピンへの渡航を自粛するよう促した。

だが、2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領が中国との協力的な関係の構築を目指す意向を明らかにすると、フィリピンは中国にとっての「温かい関係」のパートナーになった。

フィリピンを訪れた中国人旅行者は同年、初めて600万人を突破。同国にあるカジノのゲーミング収益は昨年、前年比14%増の32億8000万ドル(約3590億円)となり、業績は今年に入っても好調だ。

中国にとっては「冷えた関係の」パートナーとなった韓国は、カジノを利用する中国人客とゲーミング収益をいずれも減らしている。中国は昨年、韓国が認めた米軍の最新鋭迎撃システム「THAAD(高高度防衛ミサイル)」の配備を厳しく批判。韓国を訪れた中国人旅行者は前年比48%減となり、減少傾向は今年も続いている。

一方、南シナ海を巡る問題で中国支持の立場を明確にしたカンボジアは、中国との「熱い関係」を築いた。中国からの旅行者は昨年、前年比50%近く増加。約120万人に上った。カンボジアの首都プノンペンにあるナガワールド ホテル&エンターテイメントのゲーミング収益は、前年比85%増の9260億ドルとなっている。
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編集=木内涼子

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