例えば、筆者がよく長期出張で滞在するオランダのアムステルダムは、「堂々と大麻が吸える場所」として世界中から若者たちが訪れる場所だが、実は、オランダの法律では、大麻使用は違法。大麻を含むソフトドラッグに関して、寛容政策を採用しているだけだ。
オランダ政府のウェブサイトによれば、「コーヒーショップ(大麻を販売するショップ。喫茶店とは区別されている)でのソフトドラッグの販売は犯罪だが、この犯罪に関して検察は起訴しない」とされている。また、一般市民に関しても、5mg以下の大麻もしくは5株以下の大麻の苗の所持に関しては、その犯罪行為に関して起訴されないこととなっている。つまり、犯罪であるが、起訴しないということだ。
合法化に関しては、医療用売買、娯楽用売買、栽培という3つの領域に切り分けるのがわかりやすい。前述のオランダは、コーヒーショップにおける大麻販売が容認されている一方で、5株以上の苗の栽培はできない。こうした矛盾の解消を含め、規制自体の見直しの動きもある。米国では2018年5月現在、29州とワシントンDCにおいて医療用大麻が、9州とワシントンDCにおいて娯楽用大麻が合法化されている。
カナダは、2001年に医療用大麻が合法化されており、今年の10月には娯楽用大麻が連邦レベルで合法化される方向だ。これが予定通り実施されれば、カナダは、世界で初めて娯楽用大麻を合法化したウルグアイに続く2番目の国となる。大麻の医学的研究に関しては、カナダと並びイスラエルが先進国だ。
専門家が不足する大麻ビジネス
いずれにしても、日本にいると“使う側”のことがまずイメージされるが、合法化の動きが活発化する北米では、新たなビジネスの機会としての注目も高い。
しかし、大麻合法化とそれに伴う事業機会に関しては、大麻が持つ効能および使用目的に関する議論、法制度の複雑性、人々の日常からそれほど遠くない場所にある“ブラックマーケット”の問題など、考慮すべき課題のレイヤーが複雑だ。
「規制の状況などを加味したうえで、この業界をきっちり語れる専門家はまだ少ない」
こう指摘するのは、米国ケンブリッジを拠点に企業調査や経営幹部のリスク調査を手がけるブティック型のコンサルティングファーム、ベレム・グループ(Belem Group)の創設者兼マネージング・ディレクター、タニャ・ホーク(Tanya Hoke)だ。
PEファンドなどからの依頼を受け、投資案件に関わる経営幹部のバックグラウンドチェックなどを行う彼女は、2015年、大麻業界への投資案件に関わる調査依頼を受けたことをきっかけに、大麻業界に特化した事業として、ゲイレン・ディリジェンス(Galen Diligence)を立ち上げた。