岡島:今ビジネスの現場では“非連続のイノベーション”をしていかなくては生き残れないと言われるけど、新しいことをやるのはみんな怖いんですよね。
例えば、富士フィルムが化粧品や薬を作るって、フィルム事業をしていた人たちにとっては怖いわけじゃない。でも、今後フィルムの先細りが見えているうえでは、誰かが情熱を持ってやるしかない。
困っちゃうのは、優等生的な人は案外こういうチャレンジをできないこと。セミナーや講演会をしていて感じる今の若手の一番の問題は、スキルが高くてやるべきこともやっている、つまり「will」「can」「must」で言うとcanとmustはあるけれど、「will」がないこと。「何をやりたいかわからないから教えて欲しい」って言われたりしますが、私は占い師じゃない(笑)。
私はそこで、原体験に遡ることが大事だと思っています。例えば親に褒められたとか、そういう経験に基づくもの。それに発露しているような「will」でないと、辛いことを乗り越えられるほどの強さがない。
かわいそうなのは「こう言ったらカッコイイと思われる」というものを自分の「will」として言わなきゃいけないと思っている人。結局は承認欲求なんだよね。
自分で自分のことがわからない人たち
松嶋:田舎出身の友人と「自分たちが東京に出てきてやってこられているのは何故なのか?」って話していて、ふたりに共通していたのが子供の頃に秘密基地を作っていたことだった(笑)。ゼロから基地を作ったことのある人はモノを作る能力があると思う。
岡島:あー、作ってた。私は都会っ子だったけど。いまどきは“基地のキット”とか渡されちゃうけど、それじゃダメなんだよね。
松嶋:そう。自分たちで考えた「秘密の言葉は何?」みたいな経験をしていないと。
岡島:やっぱり、子供の頃に自分たちで作り出すことやその楽しみを経験しているかは大事なんだろうね。だから今は多くの企業に、「若手に機会を与えてください」って言っています。ゼロからやってみないと、何が好きなのかわからないから。
松嶋:最初から決め事をして仕事を与えてるのがダメだね、きっと。それじゃ情熱を傾けられるようにならない。趣味をビジネスにしたい、とか考えないのかな? 夢が何かを言わない人も多い。
岡島:夢については“言わない人”と“言えない人”がいて、どちらかといえば後者が問題。そういう人は、相手が求めているものに合わせていくマインドセットになってしまっていて、そのうち自分が本当に何を好きなのかわからなくなっちゃう。
松嶋:自分が好きなことで遊ぶってことをしていないのかな。遊ぶ余裕がないのもあると思うけど、余裕なんて自分で作るもので。僕は余裕がなくても遊んでる(笑)。
岡島:それは私も同じだけど、そうできるのは、「その方が結果として良い」って知ってるからじゃない? 煮詰まったら“場所を変える”とか、“時間を変える”とか。それが結果的に良かったね、ってなることが多いけど、そういう成功体験がない親に育てられると、「いつまでもサッカーなんてやってないで、いい加減勉強したら?」みたいになる。
松嶋:子供の時に「あなたには才能ないから」って親に言われたら悲しいよね。