奥本:それとは別に、日常生活もかなりデバイス越しにデータ収集できてしまうわけだけれど、こういうビヘイビアデータのプライバシーもあるね。明らかに健康を害するような生活習慣で、いわゆる「ハイリスク」な人たちがたくさんいるわけだけど、その人たちと同じ保健料を支払うことに抵抗を感じる人たちもいるし。特に、シリコンバレーは健康に対する意識が高いから。
渡辺:その辺は「健康にいいことをしたら割引」みたいなポジティブなインセンティブをつけていく方向がいいんじゃないかな。一方で、自分の努力では変えられない病気や事故なんかは、そういう人たちを健常者が支える社会保障は大事だと思っている。
奥本:フェイスブックの話に戻ると、前にこの対談でも話したけど、恐ろしいほどフェイスブックに嗜好が知られているわけじゃない? その辺の、行動履歴とか好き嫌いとか、「絶対に知られたくないわけでもない、でも、知られているのは気持ち悪い」という、プライバシーに関する個人の心象はどうなっていくのだろう。
渡辺:私はもう「私の好みのものを勝手に見つけて広告に出してくれるなら知られてもOK」という感じなんだけどね。シリコンバレーのプライバシーコンシャスな皆さんとは一線を画するわけですが。
奥本:アメリカに住んでいると、日本に住んでいた頃と比べてプライバシーに関する感覚も随分変わってきているのは確か。
渡辺:日本にいた頃は、家族以外の人に鍵を渡して自分がいない間に家を掃除してもらうとか、旅行に行っている間にペットシッターが家に入って猫の面倒を見るとか、ちょっと信じられなかったけど、今は普通にやってしまう。
奥本:そう。エアビーアンドビーなんかも赤の他人を自宅に招き入れるわけだからね。米国のプライバシーに対する意識は、他の国と比較すると根本的に低い。それに、米国は最初にビジネスありき。企業がプロテクトされているから、個人のプライバシーの保護に対しては二の次になるというのもある。
渡辺:「さて、私たちはどうやってあなたの業界を規制したらいいんでしょう」みたいなへなちょこ議員もいる中で、これからどうやってプライバシー保護の枠組みを作って行くのか見ものだね。
奥本:アメリカは、個人のプライバシーに関して真剣に議論されたことがあまりない。ヨーロッパがGDPRでお手本を見せたことだし、今後法的な見直しが行われるのを期待するわ。
連載:誰も知らないシリコンバレーの裏事情
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