危機に瀕するアトランティックサーモン、保護へ向け大きく前進

(Photo by Jeff J Mitchell/Getty Images)

アトランティックサーモン(タイセイヨウサケ)の個体数は、原産の北大西洋全域で40年間にわたり急激に減少してきた。産卵のため北米の河川に戻ってくる成魚の数は、1970・80年代には180万匹だったと推定されているが、今では50万匹以下にまで減っている。

200年前には、毎年何十万匹ものアトランティックサーモンが、米国のペノブスコット川やコネティカット川を上り産卵していた。だがこの種は現在、米国で絶滅危惧種に指定されている。

カナダのニューブランズウィック州とノバスコシア州の間にあるファンディ湾に注ぐ河川には、かつてサケがあふれていたが、現在ではサケを見ることはほとんどなく、同種はカナダでも絶滅危惧種に指定されている。2017年、ニューブランズウィック州のマカデビック川に産卵のため戻ってきた野生のサケは一匹もいなかった。1992年に観察が始まって以来、初めてのことだ。

北大西洋地域には、ロシアやラブラドール地方の河川など、健全なサケの生息域がいくつかあるものの、全体的な生息数は急激に減少している。アトランティックサーモンは、深刻な危機に直面しているのだ。

そんな中、明るい出来事があった。大西洋サーモン連盟(ASF)と北大西洋サーモン基金(NASF)は、漁業従事者への経済支援と引き換えにグリーンランド沖でのサケの商業漁業を中止する合意を取り付けたのだ。これによりアトランティックサーモンは、切実に必要としていた保護を得ることができた。

もちろん、アトランティックサーモンは他にもあらゆる脅威に直面している。米国の河川に建設されたダムや、カナダの一部で行われる娯楽目的の乱獲、カナダのセントローレンス湾でサケの稚魚を食い荒らすシマスズキが増加していること、サケの養殖による破壊的影響、海水温度の上昇などだ。
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編集=遠藤宗生

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