スマートホームで命を救う、英ケアテック企業が描く未来

Alexander Kirch / Shutterstock.com

「創業から3カ月で誰かの命を救ったことのあるテック企業は多くないでしょう」。

イギリスのケアテックカンパニー「Alcove(アルコーブ)」の共同創業者でCEOのヘレン・ボーウェイはそう語る。

ある女性がバスルームで転倒したとき、彼女は意識を失い、緊急用の非常ボタンを押すことができなかった。しかし幸い、彼女の家にはAlcoveの動作探知センサーが備わっていた。センサーは彼女が動けなくなったことを感知し、彼女の家族に通知を送った。

「自立できるスペース」を設計せよ

小頭症の姉(妹)とともに育ったボーウェイにとって、障害者の複雑なニーズに対応するのが難しいこと、そして“ローテクな解決策”がいかに役に立たないかということは常に悩みのタネだった。「『助けてください、障害をもっているんです』。彼らはそう叫ぶしかないのです」と彼女は言う。

そこでボーウェイは2014年、Alcoveをスタートした。家のなかを、お年寄りや障害をもった人々が自立して暮らせるスペースに変えるための企業である。

精選されたスマートホームデバイスのパッケージを販売することが彼女のビジネスだ。すべてのデバイスは使いやすいAlcoveのソフトウェアにつながり、Alcoveのチームによって設置とメンテナンスが行われる。

目的に応じて異なるパッケージが用意されている。Alcoveのデバイスだけで構成されているものもあれば、AlcoveのソフトウェアとAmazon Dotのようなハードウェアがセットになっているものもある。たとえば、「Wandering」パッケージには、アマゾンのドアベル「Ring」と「Echo Show」(スクリーンに情報を映し出すデバイス)に加えて、お年寄りがあやまって家を出てしまった場合や不審者が訪ねてきたときに通知を送る動作探知センサーがついてくる。

寝たきりの家族がいる場合には、Alcoveのボイスコントロール式スマートライトが便利だろう。また認知症患者のためのセットには、薬を飲む時間をリマインドしてくれるデバイスが入っている。

ほかにも、壁や椅子、ベッドにとりつけるセンサー、煙や温度を感知するセンサー、GPSトラッキング機能のついたスマートウォッチがAlcoveのコネクテッドデバイスとして揃っている。
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翻訳・編集=宮本裕人

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