エストニア国内の動向も紹介しよう。「エストニアから税理士が消えた」と一部のメディアで表現されているのを目にするが、実際には、消えてしまったわけではない。
電子政府としての基盤が整備されたことで、あくまで個人向け業務がほとんど不要に近くなっているだけであり、法人向け業務は依然として残っている。しかし、同国では法人向けの業務も自動化が計画されており、「本当に」税理士がいなくなる日も遠くない。
「Reporting3.0」と呼ばれるプロジェクトが2016年頃から計画されている。このプロジェクトは企業の税務申告の撤廃を目的にしたもので、中小企業であれば、法人口座間の取引に基づいて課税額を自動で計算、申告まで行えるようになる。
エストニア会計士協会の会長であるMargus Tammeraja氏によると、まずはB2G(企業対政府間)の電子請求から電子化を進めていくとのこと。エストニアは「電子国家」と頻繁に表現されているが、会計業務においては手動が占める割合が多いのが実態だ。同氏によると、公的セクターに請求を行う約4万5000社のうち、約1万6700社は会計ソフトウェアを使用していないそうだ。
このように、従来、税理士や会計士が担当していた法人向け業務を自動化しようとしているが、驚くべきは当事者である会計士たちがそれを推進しているのだ。人がやらなくていいような単純作業は効率化し、より付加価値の高い仕事に集中できるようにしているのだ。
エストニアはまだまだ発展途上、国自体がスタートアップ的な思想で運営されている。「e-Residency」プログラムもベータ版であり、完璧ではない。電子居住者たちのコミュニティからフィードバックを得て、改善を積み重ねている。
「Government as a Service」という思想、それはつまり政府は常にアップデートし続ける必要があるということでもある。世界中から注目されているエストニアが、今後どのように発展していくのか、とにかく目が離せない。