これは、同国の電子公共サービスを、世界に向けて開放するもので、世界中の誰もが、国外からであっても、エストニア国民と同様のさまざまな行政サービスを利用できる。
この仕組みを利用すれば、日本に住んでいながら、EU圏での事業が可能になる。エストニアでの会社設立や銀行口座の開設ができ、電子署名による取引、納税までオンラインで可能になるのだ。これまでの「Government as a Service」のアプローチを、さらに昇華させたものとなっており、エストニアの電子政府による恩恵を、余すところなく享受することができる。
この「e-Residency」プログラムは、エストニアの国家戦略の主軸であり、これを利用して同国に会社を設立する起業家の誘致を、積極的に推進している。
そもそもの発端は、「2025年までに新しい国民を1000万人増やすためには、国は何をすべきか?」という問いかけから始まった。移民政策のように、同国に単純に移住させることを目的にしていたのであれば、到底目標の1000万人には達しないだろう。しかし移住しなくても国民を増やすことができれば、という発想から「e-Residency」の構想が生まれた。
同プログラムを開始した初年度には119カ国から7000人以上の「e-Resident(電子居住者)」が誕生した。この結果は、当初計画された数値の3倍である。 そして、電子居住者たちによる企業の設立数も急速に増え、最初の月には2社、次の月から7社、30社となり、2015年12月には100社が設立されていた。
いまや電子居住者は3万5000人、設立された会社は5000社に達している。この勢いはさらに加速しており、いまやエストニア国内の出生数よりも、同プログラムの申請者の方が上回るほどになっている。
プログラムを利用して設立された会社が増えたことで、エストニアに新たなビジネスが生まれ、経済成長にも経済貢献にも繋がっている。
例えば、2015年に設立された「LeapIN」というスタートアップは、電子居住者たちに、エストニアでの会社登記のサポートはもちろん、バーチャルオフィスの提供や会計サポートや法律相談などさまざまなサービスなどを提供している。