「e-Residency」ではコミュニティも活発だ。政府機関による公式フェイスブックグループも用意されており、世界中から約4500名が参加している。
プログラムの責任者を務めているKaspar Korjus氏もグループに参加しており、最新の情報提供や、グループに参加している一般メンバーからアイデア募集をするなど、相互やりとりが盛んに行われている。電子居住者たちは世界中にいるため、オンラインでサポートしあっているのだ。
オンラインのコミュニティと同様にオフラインのコミュニティも重視されている。e-Residencyチームは、世界各国でミートアップを開催し、今後の計画の発表やネットワーキングなどを行っている。5月上旬にはプログラムの副責任者であるOtt Vatter氏が来日し、公式イベントが東京で初めて開催された。
イベントでは、電子居住者たちの「コミュニティ」を強化するべく、独自のコミュニティプラットフォームを構築していることが発表された。プラットフォーム上から同国の行政サービスの利用や、同プログラムを利用して設立された企業の求人検索や掲載、イベントの開催などができるようになる予定だ。
提供予定のコミュニティプラットフォームのイメージ
さらに、このコミュニティ内で利用可能な、独自トークン(代用貨幣)を提供することも計画されている。昨年、エストニアの「e-Residency」チームが「エストコイン(Estcoin)」と呼ばれる電子通貨導入を検討していると発表し、国家としてICOを検討していると話題になった。
この発表に対して、欧州中央銀行のドラギ総裁は、「ユーロの代替通貨を提供することは許されない」と反対意見を述べていたというが、Ott氏は、「我々はEUに属している以上、ユーロの代替通貨を提供するつもりはない。エストコインはe-Residencyプログラムを拡張し、電子居住者にとってより魅力的にするための施策のひとつである」と説明した。
エストコインの発行によって調達した資金は、技術的投資にも利用されるようだ。さらにはプログラムを通じて設立された企業への投資を行うファンドとして運用されることになれば、外国人起業家の誘致としての魅力も増すだろう。
このように、エストニアは着実にバーチャル国家としての基盤構築を進めている。
Ott氏は「我々は世界最大の国家を目指している。エアビーアンドビーは不動産を所有していないが世界最大の宿泊施設提供プロバイダであり、フェイスブックは独自にコンテンツを作成していないが世界最大のメディアである。世界中に電子居住者がいれば、領土や物理的な居住者が少なくとも、エストニアが世界最大の国家になることは不可能ではない」と述べた。