昨年、3月28日に策定された「働き方改革実行計画」にのっとり、昨年末には副業・兼業の推進に関するガイドラインが提案されました。
あらためて考えてみると、働き方とは「従業員と経営者が会社組織の中でどのような関係を築くか」という組織の在り方と、それに関するルールのことです。
過労死の増加や派遣社員の問題、団塊世代の一斉退職などを受け、私たちにとって最も身近なコミュニティである会社組織の在り方が昨今、見直されつつあります。
今回は、ブロックチェーンが組織のあり方にどんな変化をもたらすのか、を話します。
組織の3要素とルールの本質
組織論の権威、チェスター・バーナードは、ある集団が組織であるための条件は以下の3つと定義しています。
1. 価値観への共感
2. 組織に貢献する意思
3. 円滑なコミュニケーション
まず、組織は共通の目的をもっています。組織に参加する人間は、その組織が目指す理想や価値観に共感して行動します。
つぎに、組織を構成するメンバーは互いに協力し、組織に貢献する意思を持っていなければなりません。これにより組織に参画する人は、それぞれの役割のもと力を発揮することができます。
最後に、組織内では円滑にコミュニケーションが取れなければなりません。円滑なコミュニケーションによって、組織は共通の目的に対し、より効率的に協力し、行動することができます。
これらの要素は、前回の記事で紹介したコミュニティの「目的」と、それを共有する人間同士の関係性に一致します。同様に、こうした条件のもとに集まった組織を効果的に機能させるために設けられるのが「ルール」です。
一般的に、組織を維持するためのルールは「賞罰」、つまり報酬と罰則を組み合せて設計されます。
過去に人類が辿ってきた組織の在り方の変化は、このルールを「誰が、どのように制定し、どのような手法によって執行するか」に依拠してきました。特にテクノロジーの進歩による手法の変化は、組織の在り方に大きな影響を及ぼしています。
こうした、人類の歴史と組織の在り方について、鋭い洞察を加え、来るべき新しい組織のかたちを提案したのが、いま話題の「ティール組織(英題:reinventing organizations)」です。
ティール組織にたどり着くまでの組織の変遷
ティール組織論において、私たち人類が所属してきた組織の在り方は大きく5つに分類されます。この記事では、特にテクノロジーが与えた組織構造の変化に注目して5つを紹介したいと思います。
まず、原始的な世界においては、組織のルールは原始的な力、つまりは暴力によって執行されてきました。これは組織を維持するためのテクノロジーがほとんど存在せず、物理的な力の強弱が組織において最も重要な要素であったからです。これが「レッド組織」と呼ばれる組織の在り方です。
つぎに、文字と農耕というテクノロジーを獲得したことで、神話や歴史を用いてルールを制定し執行することが可能になりました。文字と言語は情報をある一点に固定する技術であったため、神官や王、貴族、奴隷などの固定的な階層構造に基いて、より大規模な組織が維持されるようになりました。このような形態の組織が「アンバー(琥珀)組織」です。