最終回は、「ネットワーク効果」を生かす戦略を選び、最短時間で最大のユーザー数を囲い込むことに成功したSNSに注目する。
約38年─。ラジオが最初の5000万ユーザーに達するまでにかかった年数である。
翻って現代、ソーシャルメディアのフェイスブックとツイッターがそれぞれ同数に到達するのに要したのは前者が1年、後者はわずか9カ月。CPU(コンピュータの中央処理装置)の進化、インターネットやブロードバンドの普及など、技術革新を組み合わせたデジタル・プラットフォームだからこそ、この爆発的な成長はあり得た。
だが、上記の条件を満たすソーシャルメディアなら他にもあった。なぜ、フェイスブックやツイッターなどの一部のサービスが世界的企業へと成長を遂げたのか。その理由は、利用者が利用者を呼び込む「ネットワーク効果」のメカニズムへの理解と、それに裏打ちされた戦略にある。
そもそも、ネットワーク効果そのものは普遍的なもので特別なものではない。宗教における信者、貨幣における国際通貨なども、ネットワーク効果によって歴史とともにその価値は高まってきた。
だが信念や生活必需品とは異なり、ソーシャルメディアは急成長を期待できるが、衰退もまた早い。利用者にとって使うインセンティブが少なければ、他のサービスへの乗り換えが技術的に容易なので離脱率が高くなる。その点をフェイスブックの共同創業者マーク・ザッカーバーグもよく理解しており、アダム・ペネンバーグ著『バイラル・ループ』(邦訳:講談社刊)で次のように述べている。
「ソーシャルネットワーク自体はあくまで土台ですから、オークション・サイトほどネットワーク効果を期待できません。もし既存のライバル業者よりも優れた効率的なサービスを提供できれば、利用者を奪うことができます」
ハーバード大学に始まり、全米の大学を経て一般層に開放したフェイスブックの成長に翳(かげ)りが見え始めた頃、ザッカーバーグはある手を打った。「あなたの知り合いかも」という友人候補を示す機能を加えたのだ。これが決め手となり、フェイスブックは先行のマイスペースやフレンドスターを引き離すことになった。