第2回は、複数の関係者をつなぐことで利益を得る複合デジタル・プラットフォームのメカニズムと成長戦略について紹介する。第1回はこちら。
近年、インターネットとモバイル端末の普及により、急速にデジタル企業が増加している。なかでもグーグルやアマゾン、フェイスブックは、広告調査会社インターブランドの「2017年ベスト・グローバル・ブランド」にそろって上位10位以内に入るなど、瞬く間に世界中の消費者に認知されるほどの有名企業になった。
こうした企業の特徴は、相互に需給関係の成り立つ複数の顧客を自社が築いたプラットフォーム上に集め、ビジネスを展開させている点にある。同一プラットフォーム上で他の顧客が取引することによって新たな価値が生まれ、顧客が増加。ネットワーク効果により、さらに関係者が増えるという仕組みである。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)やマサチューセッツ工科大(MIT)で教鞭を執る経済学者のデビッド・エバンスとリチャード・シュマレンシーはこうした多面的プラットフォームを「マッチメイカー(Matchmaker)」と呼んでいる。
じつは、この「マッチメイカー」自体は新しいものではない。
例えば、ショッピングモールでは不動産開発業者が企業などに軒先を貸し、そこで消費者との間で売買が行われる。不動産開発業者はテナント料を取り、企業は消費者との売買で利益を得る仕組みである。新聞社の場合は、読者に向けて新聞を売る一方で、広告スペースを広告主に販売している。結婚相談所やクレジットカード会社も然り。昔から私たちの近くにあったのだ。
それが、技術革新によって容易に展開できるようになった結果、新種のマッチメイカーが次々と生まれている。冒頭のIT企業に代表されるようなデジタルサービスである。
エバンスとシュマレンシーは共著『マッチメイカーズ』(未邦訳)のなかで、1.CPU(コンピュータの中央処理装置)の進化、2.インターネットの出現、3.ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の誕生、4.ブロードバンドの普及、5.プログラミング言語の増加、6.クラウドストレージの拡大、の“6つのテクノロジー”がそれを可能にしたと指摘する。
半導体の集積密度が2年で倍になるという「ムーアの法則」通りに半導体が進化すればCPUはさらに改善され、クラウドストレージの拡大も望めるだろう。